時代的背景を紡ぐ 本因坊秀策書簡【68】本因坊家の台所事情(4)

技芸にもいたせ天下に聞え候身
 秀策を語るにつけ根付から四角四面で謹厳そのものの天才棋士をイメージして関係資料を調べていましたところ「女郎買も稀に参り候」という文言に出会いびっくり仰天。その反面、秀策先生も鬼神でなく人間であったことにホッとする親しみをおぼえ描きやすくなりました。


 ところで、なぜ「女郎買」が田舎暮しをしていた故郷因島の父輪三に知らされたのでしょうか。秀策の兄孫に当たる桒原八千夫さん(故人)や秀策研究家樫本清人さん(故尾道市図書館長)らの推測をもとにまとめてみました。
 前述の長い手紙のやりとりは駄駄に似た父からの説教じみた内容を弁解、納得させる返信にいらだっていることがうかがえます。秀策は本因坊第十四代跡目でお城碁の連勝記録更新中の31歳。父輪三は、70歳まで生きるはこれ稀なりといわれる時代のできごとです。秀策にとっては天下無敵といわれる棋士として当然のことながら贔屓(ひいき)筋も多くファンからの接待も多かったころです。
 このことを能美島の石谷広二(当時本因坊二段)が秀策や本因坊家は遊湯三昧の生活をしているなどと因島から借金の督促にきた秀策の兄直太郎(寅四郎)にふき込み帰らせました。このことを知った父輪三は「御手元悪しき儀は書かぬよう」との秀策の依頼にもかかわらず桒原家の家計不如意を訴えた上で「お前(秀策)は女郎買い、芝居見物と大変贅沢な生活をしているそうだが…」などと書き送ったものと思われます。もちろん女郎買いや芝居見物などは石谷の口から出ていることは間違いなく、ほかには見当りません。従って、石谷自身の借金引き伸ばしもあって告げ口をしたものと想像できます。
 秀策は、父の手紙に対してむずかる子どもをあやすように贔屓筋との付き合い方や遊湯の理由をありのままに伝え父母を納得させようと努力している様が随処に見られます。本因坊の苦しい家計の理由や江戸の不安な世情、秀策の立場など咬んで含めるように、父の誤解や愚痴に腹を立てることもなく説得した内容は彼の孝心の一端に触れたように思えました。殊に

「私手元さえ可也に候えば実に古稀寿(70歳)の御両親様のことに候間、御送金申しあげ度、心掛居り申し候―」と書き、また「自慢には候得共技芸にもいたせ、天下に名の聞え候身をもちながら、両親を心易く御暮し出来候様にいたすことも出来ぬか杯と存じ候と悪しき心特に相成り候」

と、涙ながら自分のことは分っているので何も言って下さるなと父に願っているようすがうかがえます。
(庚午一生)

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