白百合の種は飛び来て我が庭によくぞ咲きたる水かけやりぬ

川崎 訓子
 一首の焦点「よくぞ咲きたる」から、自然への作者の感謝が伝わるが、主因は「種は飛び来」「我が庭に」「よくぞ咲き」を受けた『水かけやりぬ』の穏やかな結句にある。


 「水をかけやる」という行いは、地球上の生命の共生(例えば植物と葉緑素の関係)に通じ、互いに生き継ぐため、感謝と信頼を交換することである。(作品で作者は水をやり、白百合は花で作者を癒す)
 短歌に限ったことではないが、創作・批評・鑑賞には経験・知識と想像力が必要だ。この場合の想像力は例外をよしとしたい。
 例えば鳥は泳ぐ。魚は飛ぶ。鳥は飛べない…など。
 ここで「白百合の種は飛び来て」と詠まれた作者は園芸家と思われ、百合が球根草であることは充分にご承知。だから「白百合の種は飛び来て」は作者の『想像の産物』とさせて頂く。
 それにしても「球根の種」とは思いもかけぬ課題に直面してしまった。
「種は飛び」の場合、風媒花のイメージとなり、圧倒的な種子数により、地上すべてに白百合のそよぐ風景が空想される。
 さて風景のそうした美しすぎる単一化が可能かといえば、種の運び屋、種運びの手順、土壌成分の確保などの繁殖メカニズムにつき、鑑賞子は経験・知識ともに不足で断言はできないが、無理と直感した。
 それらをご承知の作者が、結句の通り、白百合に「水をかけ」られる。
 その穏やかさに「地に平和、人には善意」の意思を感じ、鑑賞子は思わずも感動させられた。
(文・平本雅信)

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