因島で見た野鳥【136】カイツブリ威風堂々
カイツブリは幾度か取り上げたが、陸地に上がることは滅多にない。カルガモなどを観察中に、たまたまカイツブリの歩く姿を見たので、その様子を紹介する。
写真①は、休息中のカルガモの群れ近くに上陸してくるカイツブリで、カルガモが怪訝そうな目で見ている。
写真②は、それに一瞥もしないで、群れの中を通り過ぎていくカイツブリである。
カモ類などでは、3本の足指が膜(弁膜)で繋がった水かき(蹼)を持つ蹼足(ぼくそく)で、水中では、水かきで水を蹴って移動し、陸地では、不器用そうに見えるが、胴体をほぼ水平に保ってペタペタと歩き、水辺の陸地に上がって草などを採食することもある。
カイツブリは、3本の足指それぞれに、木の葉の形に似た弁(弁膜)が付いている弁足である。いわば大きなスキューバダイビングのフィンに似た足ヒレを合計6枚持っており、しかも、このフィンの幅をすぼめたり広げたり、角度を変えたりできる。
スクリューと舵が最後尾についている船のように、カイツブリの脚は、ほぼ、お尻の位置にある。
これらのため、水中では大きな推進力と素早い方向転換ができ、潜水による魚などの捕食に適応している。
ところが、重心が脚の付け根より前方にあるため、陸地で胴体を水平にして立つと前に倒れこむのであろう。
写真①②では、直立して歩いている。
本連載(133)で取り上げたシロエリオオハムなどのアビ科の鳥は、立ち上がるのを諦めて腹ばいになって陸地を移動する。
カイツブリの顔は鋭い目つきをしており、虚勢を張っているようにも見えるが、巨大なカルガモの前を、「威風堂々」と歩いているようで面白い。
この後、すぐに水の中に戻ったので、上陸の目的がよくわからなかった。(4月15日・記)
文・写真 松浦興一
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