イノシシ急増被害深刻【2】海を泳ぐ事情と犬嫌い

ミカンを食べるウリ坊
 「本当にイノシシが島から島へ泳いで渡るのであろうか」。芸予諸島に住む人たちにとっての関心事だった。それも今となっては、多くの目撃者の証言から常識となってきた。昼間を中心に明るい時間帯が多いのは、夜目が利かないので夜間の渡海は危険だから、と近畿中国四国農業研究センター・鳥獣害研究室(大田市)は説明する。


臆病だが追いつめると危険
 人間の視力検査でいえば0・07程度。田畑に夜間現れるのは、犬の鼻を上回る鋭いきゆう覚が利くため作物などは臭いでかぎわけ、熟成したものを食い荒らす。人けや犬嫌いだが、遭遇した場合こちらがじっとしていれば向こうから去って行く。臆病だが追いつめると危険で、鋭い牙で猟犬が負傷したり致命傷を負わされることがある。臆病なイノシシが外敵に見つかりやすく、無防備になる海上を昼中泳いで渡るのか。
繁殖期の恋の渡海
 考えられるのは弱視と猟犬に追われて逃げ場がないと覚悟したら海に飛び込むんですよーと、瀬戸田の猟友会員で「イノシシと話ができる男」と呼ばれている岡田善清さんの弁。
 もう一つの理由に晩秋から冬場は繁殖期を控え、雄同士の争いが激しくなる。数百メートル離れた対岸にいる雌のにおいをかぎつけると「恋の波路」真っしぐらと猟師はいう。
生後2年でウリ坊出産
 雌イノシシは、冬に身ごもり、春から夏にかけて5―6頭の子を産む。例えば、百頭の半分が雌の成獣で、幼獣のウリ坊が順調に育てば、翌年には300頭前後に増える計算になる。雌のウリ坊は生後2年で子を産み始める。数年で千頭をこえることになる。
冬場の餌は甘いミカン
 いったい島内にイノシシが何頭いるのか、と尋ねると誰も知らない。確かなのは駆除の頭数くらい。
 冬はイノシシにとって餌の確保がむずかしい。山のドングリは尽き、田畑は休む。タケノコがのび出す春先まで食いつなぐのが大変だ。だが、瀬戸内海の島々は冬場も柑橘類が豊富で願ってもない住み処となる。
ミカンの皮むぐイノシシ
 近年になって、島のミカン畑には上手に皮をむいたイノシシの食べかすが散らばるようになった。一番の好物は、値段が高く農家が期待するデコボンのようで、酸っぱいレモンや甘夏、伊予かんの被害は少ない。

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