故郷への手紙【12】石の島(2)

湯の浜露天風呂

湯の浜露天風呂

石の島(2)

砂浜を踏みしめて、貝殻と石に夢中になった。

風がひたすら髪をさらっていく。

ビルの街を歩けば、きっとうっとうしく思うだろう。

ここではそんな風が心地よく感じられる。

第一の目的地は坂の途中にある露天風呂。二十四時間無料で開放している温泉だ。

パルテノン神殿のような出で立ち。観光案内を見たとき、その姿に一目惚れした=写真

ここに来るために新島行きを決めたようなものだった。

裸足になり、ズボンの裾を膝まで上げて準備万端。

船旅で重たくなった脚に染み渡った。

気の向くままに坂を登って辿り着いたのは、ガラスアートミュージアム。

新島は、コーガ石という石の産地。

この石、新島とシチリア島でしか採掘されない。

透き通る黄緑色のような何とも言えない色に吸い込まれた。

至るところにあるモアイや動物などの石像も、コーガ石で作られたもの。

この島の生命力のようなものを感じた。

人はいない。野良犬も猫もいない。目の前に海がいる。

遠くに感じる生命の気配たちが、私の心を踊らせた。

(青木恵)

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