一本の石蕗(ツワブキ)の花にぞ見とれたり年を重ねてわかることあり

大庭美代子
 晩秋のころ、黄色なツワブキの花が庭石の根っこにすっくと立っている。作者はこの花を呆と見ているのであろうか、よく「こころ其処にあらず」という言葉を聞くことがあるが、実際に本人はこの花を見ているのである。


 しかし心の中では連想が連想を呼びながらツワブキの花を通しての自分を見ているのである。いつの間にか年齢を重ね、今までには考えてもみなかった事柄や家族関係の有りようがおぼろげに見えて来たのかも。それは一本のツワブキの花がどうしたからというのではなく、目の前に灯を点したように咲いている花に「ああきれい」という胸底の中にふいっと湧いてきた知性と感情とか同時にないまざりながらのおもしろい歌柄となっている。
(池田友幸)

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