商人の仕掛けにのせられ恵方鮨百万本の一本を買う

林原澄子
恵方鮨とは、恵方巻(えほうまき)の別名である。節分の日にこれを食べると福がやってくるとか、縁起が良いとか言われている。


品物はなんのことはない、ノリ巻きの切っていない丸のまんまの、まる齧りをする巻きずしのことで、しかも、恵方神の来る東南方向に向いて食べるとよいと言われている。

この風習は江戸の終りごろ大阪で始まったと言われ、一度廃れたが、また1970年代に復活したそうである。

備後地方では、あまり聞いたことはなかったが、最近は、何でもかんでも金銭儲けになればやる時代なので、売らんかなの心意気で始められたものと思われる。

商人がどのように仕掛けて来たのか、おそらく新聞の折り込みチラシにカラフルな写真や名文句で人を魅きつけていたのだろう。「福の神が幸せといっしょに来る恵方鮨」「価格は3割安く、昨年は100本売れたんだよ」なんて。

呼び声も高くスーパーの入口付近で売られていたのかも。

この短歌は、なかなか商魂たくましいな、と思いながら、「私も一つ、縁起物だからね…」と自分で自分に言い聞かせながら、「私がまずはじめに一本買ったから」、残りの恵方鮨は9,999本などと勝手に引き算を強調しているともとれる。

昔は節分が来ると、年齢を一つ加えていた。鬼は外、福は内、と言いながら豆撒きをした後に、家族揃って自分の歳の数だけ豆を食べたものだった。また豆撒きの役は男がやった。

食事の菜も鰯でおいしかった。塩鰯であった。ノリの巻き鮨を食べた記憶はいっさいない。

(文・池田友幸)

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