ゼノ修道士との不思議な縁

掲載号 12年05月26日号

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 福山市沼隈町にある知的障害児施設、社会福祉法人「ゼノ少年牧場」が創立50周年を迎え5月12日関係者200人が出席して記念式典を開いた。

 故ゼノ・ゼブロフスキー修道士とは不思議な縁が3度も重なった。最初は戦後間もない学生時代。友人にすすめられて読んだ松井桃樓著「アリの町のマリア」。敗戦国の日本で戦災孤児の救済活動をしていたゼノさんは孤児収容施設の建設資金がままならない。東京下町の材木店に立ち寄り「材木10本買えばいくら負ける」と交渉。「1本負ける」と聞けば、その1本だけ下さい―と詰め寄るユーモアな寄付集めが頭に残った。

 そして新聞記者になって5年目のこと、伊勢湾台風被災地取材中、三重県四日市で大きな黒い袋を盾にかけた体の小さい修道士が泥道を一人歩いていた。直感というか、こんなところで出会うのはゼノさんだ―と思った。同行して記事にしたがボツになった。

 それから10年、転勤先の福山でまた会う事になる。「ゼノ死ぬひまがない」が口グセだった。

(村上幹郎)

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