タイ洪水 世界各地の災害に関心を

掲載号 11年11月05日号

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 十数年前、友人の招きでタイを訪れた。空港からバンコクに入ると街路はいたるところで浸水、通行不能。迂回しながら目的地に到着した。翌日、観光バスで郊外をめぐっていると、いたる所で水田が冠水。農民は小船を浮べ車が通る幹線道路をワニが横切るのに遭遇する。

 日本に留学していたタイ人の通訳は「日本なら洪水被害で大騒ぎでしょうがタイではマイペンライ(大丈夫)」と笑う。被害者である農夫たちは「神様の贈りものだ」とケロリと人ごとのように言う。川上から栄養分をふくんだ土砂が流れ込んできたという恵みを感謝する習慣があると説明を加える。

 この国は外国の侵略に対しては総力で追いはらい外へは攻め込まないという歴史があり二次世界大戦も被害は最小だった。

 今回の日本の震災もひどかったがタイの津波は多くの人が死んで今もPTSD(心的外傷ストレス障害)に苦しむ人が多い。日本の災難が特別なものではなく世界各地で災害や事故があることに関心を払うことも必要だろう。

(村上幹郎)

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