双子座の横に大きな赤き星イルミネーションに勝る火星よ

掲載号 08年02月02日号

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岡野幸子

 作者は「火星よ」と呼びかけられている。そこで作者のいわれる「火星」を知りたく思った。

 多数の電灯で飾った展示物をイルミネーション(電飾)という。この電飾は美しく個性的で街角を飾るには好個の素材だ。だが、ある距離から見れば街の光に埋没してしまう。

 さらに距離をおいて人工衛星から見れば、暗黒の地表に人口密集地帯の電灯光が電飾のように見える。

 さらに距離をおいて太陽系を眺めると、水金地火木土の順で惑星が輝き回転する様子が見えよう。

 遥かな距離をとれば、天空にきらめく星座は畏敬すべき存在、遥かな遥かな距離をとれば無数の銀河が泡構造をなしているのが見えるだろうが、これは想像するのも畏れ多い。

 そこで視覚を人間の能力範囲に止める。

 さて、人間が「見る」とは何か。簡単のために熟語を並べると、目途、見聞、看護、視覚、察知、監査、閲覧、観察、鑑定などなどがあげられ、人間の多彩な見方に感銘を覚える。

ここで詩人に登場してもらおう。

太陽/月/星 そして雨/風/虹/やまびこ

ああ 一ばん ふるいものばかりが
どうして いつも こんなに
一ばん あたらしいのだろう

(まど みちお)

 人間の多彩なものの見方は、感覚の柔軟さに支えられ、見たい物は見えるようになっている。

 作者の「火星」は、「まどみちお」の言う『一ばん ふるいもの』も『一ばん あたらしいもの』も含まれていて、個性的と思われる。

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