『夏は、バカンス!?』&『ナマコの足の速さは?』 – ナマコのはなし

ナマコって?

ナマコは、漢字で『海鼠』と書きます。「海のネズミ」・・・なるほど!?
英名は、『Sea Cucumber』。「海のキュウリ」・・・うーん、なるほど!?
漢字表記も英名も、ナマコの特徴をよーく捉えているように感じますね・・・!?
ナマコは『古事記』にも登場し、我々日本人にとって馴染み深い海の幸の一つです。ナマコのコノワタ(腸)は、日本三大珍味の一つとして知られています。
ナマコは、ウニやヒトデと同じ仲間で、棘皮きょくひ動物という比較的まとまった大きなグループに属しています。

ナマコの性と生殖

ナマコは雌雄異体(オスとメスに分かれている)で、受精は体外で行われます。成熟した雌は、水中に放たれた精子の存在を感知すると、たちまち興奮して放卵をはじめます。放卵中は口の回りにある触手しょくしゅを盛んに動かして、卵と精子がよくまじり合うように拡散させます。
ナマコの雌雄を外観から区別するのは難しく、産卵期に開腹して生殖巣を調べる以外に方法はありません。産卵期は、広島付近では3月から7月に掛けてで、盛期は4~5月頃と言われています。1個体の雌は、産卵シーズン中に何回にも分けて産卵します。

ナマコの夏休み

年間を通じてナマコが最も活発になるのは、水温が低い冬季です。とくに18℃から10℃の間で食欲が旺盛となり、運動も活発となります。しかし、初夏から梅雨期の水温の上昇にともなって食欲が減退し、運動不活発となります。さらに、水温が25℃を超えると断食状態になり、ほとんど運動をしなくなります。ナマコの『夏眠』です。つまり、ナマコにとって夏は、『休み(バカンス)』のシーズンなのです!!
やがて秋となり水温が下がり始めると『夏眠』から覚め、ふたたび活動をはじめます。

ナマコの足の速さは?

ナマコは体内の筋肉(縦走筋と環状筋)をつかって、カラダを交互に伸縮させながら運動します。ある実験によると、マナマコは1時間に平均583.7 cmのスピードで移動することが明らかにされています。
マナマコが一時も休むこと無く、常にこのスピードでフルマラソン(42.195km)を走った(!?)としたら、スタートしてからゴールするまでに約7229時間、つまり301.2日掛かることになります。
もっと身近な(因島の)例えで云うと・・・
因島大浜町に在る福山大学附属マリンバイオセンターから、因島中庄町のスーパー「パルディー」まではおよそ3kmあります。マナマコが買い物に出かけ、スーパーに着いた途端お財布を忘れたことを思いだし、すぐに引き返したとして・・・
福山大学マリンバイオセンターからスーパー「パルディー」に着くまでにおよそ514時間(およそ21.4日)かかり、ふたたびマリンバイオセンターへ還ってくるのは、およそ43日後ということになります。
「マナマコのみなさま、お買い物へお出かけの際は、くれぐれもお財布をお忘れになりませんように・・・」

筆者紹介

阪本憲司
阪本憲司福山大学生命工学部海洋生物科学科 准教授・博士(農学博士)
尾道の対岸に浮かぶ向島むかいしまに移り棲み、かれこれ20年近くになります。向島は、”しまなみ海道”をつなぐ島のうち、尾道側から一番目の島になります。向島の最高峰『高見山たかみやま』の山頂展望台から眺める風景は、季節や時間を問わず、いつでも素晴らしく、風光明媚な瀬戸内の自然を存分に体感できます。

私は京都市に生まれました。その後、長崎(佐世保)、三重(伊勢)、徳島(小松島)、岩手(盛岡)、宮城(仙台)、広島(尾道)と日本各地を転々としてきました。これらの地の風土に暮らし、さまざまな自然の姿をみてきたことで、ほかにはない”しまなみ”の素晴らしさを実感しています。

『しまなみ海中散歩』と題したこのコーナーでは、瀬戸内海のことや、ここに棲息している魚介類のことなどを皆様に紹介してゆきます。どうぞよろしくお願い致します。

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