おめでたいマダイ(真鯛)
今回からは、瀬戸内海に棲息する魚介類を紹介してゆきます。まずは、『しまなみ人』開設を記念して、おめでたく “マダイ” をとりあげます。
- おめでたいマダイ(真鯛)
- マダイとのなが~いおつきあい
- マダイの生態
- 日焼けするマダイ
わが国では古来より、赤色を縁起の良い色としてきました。お祝い日には、お赤飯を炊いて祝いますよね!!体色が赤く、美味で、目が大きいマダイは、“おめでたい魚” として祝宴には欠かせない食材とされてきました。江戸時代、将軍就任の儀には、瀬戸内から江戸まで船内の
わが国では縄文時代から、マダイを食していたようです。各地の貝塚(人が貝類を食べた後、その殻を捨てた場所、およびそれらが堆積してできた遺跡のこ と)からは、多くのマダイの骨が出土しています。
また、古事記や日本書記などの古典にはアユに次いで2番目に多く登場し、日本人と深いつながりを持った魚であるといえます。
マダイは、スズキ
成魚は、冬のあいだは水深150~200メートルの砂地混じりの海底に棲息しています。成魚は、甲殻類(エビやカニなど)、クモヒトデ、貝類、小魚などを食べて暮らしています。
春になり、海水温が14~15度になると、成魚は繁殖のために群れをなして繁殖場所へ移動を始めます。3~5月の産卵前は、栄養分を蓄え身に
オスがメスを追い回す求愛行動を繰り返し、海面近くで放卵、放精します。1尾のメスが1シーズンに産する卵数は数十万から数百万で、1度ではなく数十回にわたって産卵します。
ふ化した
10センチメートルほどに成長した幼魚は沖合へ移動し、深い海に棲息するエビやカニなどを食べて越冬します。
わが国では、マダイの養殖が盛んに行われています。日光が届く浅い水深では、マダイが日焼けして色が黒くなり、商品価値が下がります。そのため、養殖 生け簀を黒いネット等で覆って光が当たらないようにします。
また、マダイの赤い色は “アスタキサンチン” という色素によりますが、養殖業者はこの色素を含む餌(オキアミなど)を与えて、いわゆる「色上げ」をすることによって、赤い色をもたせるようにしています。
次回は、マダイと同じタイ科の『クロダイ(チヌ)』 を取り上げます!!
筆者紹介
-
尾道の対岸に浮かぶ向島むかいしまに移り棲み、かれこれ20年近くになります。向島は、”しまなみ海道”をつなぐ島のうち、尾道側から一番目の島になります。向島の最高峰『高見山たかみやま』の山頂展望台から眺める風景は、季節や時間を問わず、いつでも素晴らしく、風光明媚な瀬戸内の自然を存分に体感できます。
私は京都市に生まれました。その後、長崎(佐世保)、三重(伊勢)、徳島(小松島)、岩手(盛岡)、宮城(仙台)、広島(尾道)と日本各地を転々としてきました。これらの地の風土に暮らし、さまざまな自然の姿をみてきたことで、ほかにはない”しまなみ”の素晴らしさを実感しています。
『しまなみ海中散歩』と題したこのコーナーでは、瀬戸内海のことや、ここに棲息している魚介類のことなどを皆様に紹介してゆきます。どうぞよろしくお願い致します。
最新の投稿
- しまなみ海中散歩2018年1月12日福山大学附属水族館マリンバイオセンターの新年特別企画展示~「犬も泳げば棒に当たる」~
- しまなみ海中散歩2017年4月11日尾道の名物「でべら」
- しまなみ海中散歩2010年10月17日体色を変えて素早く変身する「アオリイカ」
- しまなみ海中散歩2010年4月3日入学おめでとう ~こりゃめで鯛~
先生!なぜタイではなく、マ「真」ダイというのですか?
例外もありますが、一般的にマダイなど和名の最初にマ(真)が付く魚というのは、その『科』の中において“代表的な魚”で、タイ科の代表格が『マダイ』ということです。タイ科の魚は、世界に約100種類が存在します。このうち日本にいるのは、クロダイ、チダイ、キダイなどの13種類です。
マダイのように『真』がつく魚には、マサバ、マアジ、マハゼ、マアナゴなどがおり、見るからにその『科』の代表魚らしい外観をしています。
因に、『科』というのは分類単位のひとつで、上から「界」「門」「綱」「目(もく)」「科」「属」「種(しゅ)」です。ヒトだと、動物界?脊椎動物門?哺乳綱?霊長目?ヒト科?ホモ属?サピエンス種となります。