「キミは♂?それとも♀?」 とっても不思議なクロダイ(チヌ)

今回は『クロダイ』を紹介します。
クロダイのさまざまな呼び名
クロダイは、マダイと同じタイ科の魚です。漢字で『黒鯛』と書きます。地方名は、カイズ(若魚/関東)、チンチン(幼魚/関東)、チヌ(関西や四国)、カワダイ(秋田や福井)、チン(九州)などがあります。“しまなみ”では、『チヌ』と言う呼び方で親しまれていますね。


クロダイの分布と生態
北海道~鹿児島、朝鮮半島、台湾に分布します。沿岸性の魚で、おもに水深50mよりも浅い海に棲息しています。“しまなみ”でも、海岸の磯場や河口付近の岩壁などで、その姿をしばしば見掛けます。
海釣りの対象魚としてとっても人気の高い魚で、磯での浮き釣りや、防波堤からの落とし込み釣りに熱中している釣り人をよく見掛けます。
水原秋桜子のうたに、クロダイを詠んだものがあります。
『 黒鯛の潮寄せては磯根ゑぐり去る 』
- 夏の海。激しい波が、クロダイを釣る岩場をえぐるようにうち寄せる -
・・・とでも訳せるでしょうか。磯場の波の荒々しさと、クロダイ釣りの醍醐味が、このうたから伝わってきます。
クロダイのふし~ぎな“性”
若いクロダイは、雄(オス)でもあり、雌(メス)でもあります。つまり、体の中に精子をつくる精巣部と、卵(らん)をつくる卵巣部の両方を持った、いわゆる『雌雄同体』なのです。
クロダイは、まず精巣部が成熟して“雄”として振る舞い、その後、精巣部が萎縮し卵巣部が発達して、今度は“雌”として振る舞います。クロダイは、一 生のうちで“雄から雌に”性が変わる(『性転換』をする)ふし~ぎな魚なのです。なかには、一生涯“雄”のままの個体もいます。
『性転換』をする魚は、他にも沢山知られています。ふだん、とっても馴染みの深い魚のなかにも、『性転換』をする魚が結構いるんですよっ!!
この『しまなみ海中散歩』のコーナーで、ちょくちょく紹介してゆきますねっ!!

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スーパーで綺麗にラッピングされたクロダイ(チヌ)

筆者紹介

阪本憲司
阪本憲司福山大学生命工学部海洋生物科学科 准教授・博士(農学博士)
尾道の対岸に浮かぶ向島むかいしまに移り棲み、かれこれ20年近くになります。向島は、”しまなみ海道”をつなぐ島のうち、尾道側から一番目の島になります。向島の最高峰『高見山たかみやま』の山頂展望台から眺める風景は、季節や時間を問わず、いつでも素晴らしく、風光明媚な瀬戸内の自然を存分に体感できます。

私は京都市に生まれました。その後、長崎(佐世保)、三重(伊勢)、徳島(小松島)、岩手(盛岡)、宮城(仙台)、広島(尾道)と日本各地を転々としてきました。これらの地の風土に暮らし、さまざまな自然の姿をみてきたことで、ほかにはない”しまなみ”の素晴らしさを実感しています。

『しまなみ海中散歩』と題したこのコーナーでは、瀬戸内海のことや、ここに棲息している魚介類のことなどを皆様に紹介してゆきます。どうぞよろしくお願い致します。

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