ひとつのからだに雄と雌 – アメフラシ

アメフラシ

アメフラシ=写真上=は海岸の潮溜まりや沿岸の岩礁域などに棲息しています。因島大浜町の八重子島周辺でも、今頃の季節はよく観られます。大きなものは30cmを越えるものもあります。


アメフラシをつつくと紫汁腺とよばれる器官から紫色の液体を出します。この液は、外敵に襲われたときの煙幕になります。

アメフラシの名まえ・・・

アメフラシ(雨降)という名の由来は、海水中で紫色の液を出すと雨雲がたちこめたように広がるからといわれています。また、雨のときに岩場に集まるからという説もあり、これはアメフラシが産卵のために磯に現われる時期が梅雨時期と重なるためではないかと考えられています。
アメフラシの英名はSeahareで、「海のウサギ」という意味です。これは、頭部の二本の突起をウサギの耳に見立てたもので、中国名も海兎といいます。

アメフラシは雄でもあり雌でもある・・・

アメフラシは、体内に卵巣と精巣の両方をもつ雌雄同体で、異なる個体同士で交尾をします。数個体が同一方向に頭を向けて連なる“連鎖交尾”をすることも知られています。

陰茎(ペニスのこと)は頭部にあるため、先頭の個体は雌として、最後尾の個体は雄として、間に挟まれた個体は前方の個体に対しては雄、後方の個体に対しては雌となります。

卵は岩礁や海藻などに産み付けられ、その卵塊は「海ぞうめん」と呼ばれます=写真下=。

千葉県南部、島根県隠岐島、鹿児島県徳之島などでは身を食用にしているようですが、アメフラシが毒を持つ海藻類を食べているとその毒が蓄積されている可能性があるため注意が必要です。味はほとんどなく、不味といわれます。

アメフラシの卵

筆者紹介

阪本憲司
阪本憲司福山大学生命工学部海洋生物科学科 准教授・博士(農学博士)
尾道の対岸に浮かぶ向島むかいしまに移り棲み、かれこれ20年近くになります。向島は、”しまなみ海道”をつなぐ島のうち、尾道側から一番目の島になります。向島の最高峰『高見山たかみやま』の山頂展望台から眺める風景は、季節や時間を問わず、いつでも素晴らしく、風光明媚な瀬戸内の自然を存分に体感できます。

私は京都市に生まれました。その後、長崎(佐世保)、三重(伊勢)、徳島(小松島)、岩手(盛岡)、宮城(仙台)、広島(尾道)と日本各地を転々としてきました。これらの地の風土に暮らし、さまざまな自然の姿をみてきたことで、ほかにはない”しまなみ”の素晴らしさを実感しています。

『しまなみ海中散歩』と題したこのコーナーでは、瀬戸内海のことや、ここに棲息している魚介類のことなどを皆様に紹介してゆきます。どうぞよろしくお願い致します。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA