尾道の名物「でべら」

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尾道水道に沿って町なかを縫うように枕木を数えてきた列車が、尾道駅に辿り着く。
列車を降りて南改札口を出ると、「しまなみ」の爽やかな海風が“ふわぁ~っ”と躰と心を包み込む…。
旅の疲れを癒してくれる瞬間が、此処尾道には在る。

浄土寺山の展望岩から眺める尾道の町

海岸通りやアーケード街には、老舗やこの頃になって開店された幾つかのお土産屋さんが軒を連ねている。
店頭には、棚に陳列され、あるいは軒下に吊り下げられた“海の幸”が、私たちの目と鼻と胃をくすぐる。

そんななかに、「でべら」が在る。
他の地域ではほとんど食されることのない“尾道ならでは”の珍味である。

「でべら」と呼ばれているこの珍味の正体は、「タマガンゾウビラメ」という魚だ。
その名にもあるように、ヒラメの仲間である。

冬の寒風にさらされた「でべら」は、干物として珍重される。
まず、木槌やトンカチで骨を砕き、これを軽く炙って食べる。
瀬戸の旨みを凝縮した、じつに旨い酒の肴である。

干物として食すのがふつうだが、やはり本場・尾道とあって、アーケード街のなかに在る「むらちゃん食堂」では“刺身”の定食や丼がメニューに挙がっている。

でべらの刺身料理が食事処のメニューとして掲げられているのは、世界で「むらちゃん食堂」だけではないだろうか。

さばかれた「でべら」の骨は、唐揚げとして刺身料理に添えられる。これもまた、美味。

でべらの骨の唐揚げ

尾道へお越しの際には、ぜひ「でべら」をお召し上がりください。
また、福山大学因島キャンパスの水族館マリンバイオセンターでは、研究のためタマガンゾウビラメを飼育しています。
こちらにもぜひ、お立ち寄りください。お待ちしています。

福山大学因島キャンパスの水族館マリンバイオセンターで飼育しているタマガンゾウビラメ

筆者紹介

阪本憲司
阪本憲司福山大学生命工学部海洋生物科学科 准教授・博士(農学博士)

尾道の対岸に浮かぶ向島むかいしまに移り棲み、かれこれ20年近くになります。向島は、”しまなみ海道”をつなぐ島のうち、尾道側から一番目の島になります。向島の最高峰『高見山たかみやま』の山頂展望台から眺める風景は、季節や時間を問わず、いつでも素晴らしく、風光明媚な瀬戸内の自然を存分に体感できます。

私は京都市に生まれました。その後、長崎(佐世保)、三重(伊勢)、徳島(小松島)、岩手(盛岡)、宮城(仙台)、広島(尾道)と日本各地を転々としてきました。これらの地の風土に暮らし、さまざまな自然の姿をみてきたことで、ほかにはない”しまなみ”の素晴らしさを実感しています。

『しまなみ海中散歩』と題したこのコーナーでは、瀬戸内海のことや、ここに棲息している魚介類のことなどを皆様に紹介してゆきます。どうぞよろしくお願い致します。

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