故郷への手紙【16】石の島(6)

石の島(6)

朝の海風で顔が冷たい。
旅もこの朝でおしまいだ。

海におじさん4人組。大木を軽トラに乗せようと奮闘していた。ものすごく立派な木だった。
「頑張れ」
目が合うと、ニッコリ手を振ってくれた。

船の出発前に、坂の上にある温泉で一番風呂。
露天風呂からの景色には、思わず声が出た。ずっとここで見ていたいと思った。
帰り際のロビー、またまたおじさんに話しかけられた。
なんだかこの旅はおじさんと縁があるな。
東京から釣りをしに訪れたらしく、大物を釣ったらしい。
おいしい明日葉せんべいを教えてあげた。

この島の生き物たちは、なんだか人懐っこい。
港への道すがら、花に止まった蜂は、どんなに近づいてもお構いなし。花粉が付いた脚をスリスリしている。蜂の世界を覗いているようだった。

大きな船がお迎えに来た。
海はどこまでも広く大きい。
見下ろす波しぶきが、きれいな水色をしている。
空と海がつながりそうなこの場所が好きだ。

「また来てね」
優しい朝が見送ってくれた気がした。

青木めぐみ

(青木恵)

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