「社会を明るくする運動」入選作文【2】心の中の社会が押しつぶされる前に
尾道地区保護司会(木村修二会長)が行った第73回「社会を明るくする運動」作文・標語コンテストで表彰された作文を掲載する。
心の中の社会が押しつぶされる前に(小学校の部 尾道市教育委員会賞)
向東小学校6年 森谷阿乎さん
「明るい社会」とはどんな社会だろうか。わたしはよくテレビを見る。特に犯罪のニュースを見ると、他人事ではないと感じる。なぜなら、事件を起こすきっかけがだれの身にも、起こる可能性があると考えるからだ。明るい社会は犯罪のない社会なのだろうか。
わたしが前、弟と作ったねん土の作品がだれかの手によってこわされた。発見したその日は、友達が遊びに来ていた。ねん土だからまだ直せると前向きに考えたが、やはりショックだった。誤ってこわしてしまったのかなと最初は考えた。でも、こわしてしまったなら教えてほしかった。そう、その日はだれもこわれたことを教えてくれなかったのだ。
友達をうたがいたくはないが、もっとショックだった。
突然だがあなたは被害を受け、害をあたえた人が自首。どう思うか。私は肩の荷が軽くなると思う。なぜなら、その人には「善」と「悪」の区別が付いていると思うからだ。害をあたえた人が、自分は悪いことをした、という「罪悪感」があるのなら、また人の道を進めると思ったからだ。
しかし、わたしの作品をこわした人は楽な道を選んだ。そう、被害を受けた人が苦しむ「楽な道」を。わたしは「ショック」という重い肩の荷で押しつぶされそうだった。
わたしの心の中の社会はとてもせまくて小さい。他人から見ると気にすることもない、ちっぽけなものかもしれない。だが、どんどん小さななやみが肩の荷になり、やがて押しつぶされるかもしれない。犯罪に手をそめてしまった人だって同じかもしれない。小さななやみがどんどん大きく、重くなり肩の荷になってやってくる。どんどん心の社会は押しつぶされ、やがて犯罪に手をそめてしまっているのかもしれない。
しかしわたし達はまだ子どもだ。わたし達にはたくさんの「より所」がある。家族や友達、先生や地域の方など様々な「より所」がある。特にわたしの変化に気付くのは友達だ。わたしの表情や声のトーンを聞いて心配してくれる。よく「めいわくをかけたくない」という理由で「大丈夫だよ」と応える。
だが、友達はするどい。
「本当に?本当に何もなかったの?」
と聞いてきてくれる。わたしの気がすむまで、静かに話を聞いてくれる。
だが、わたしが友達の「変化」に気付くことがある。
例えば、教室内での「あいさつ」のときだ。いつも元気な友達が、あいさつに元気がない、下を向いているあいさつのときは必ず、
「どしたん。何かあった。」
と聞く。友達は、
「ううん、大丈夫。」
と応える。
わたしは、一緒によりそってくれた友達のように、
「本当に大丈夫?がまんしてない?」
と聞く。友達はがまんしていたのか、わたしに話してくれる。
わたしは一緒によりそってくれた友達のように、いつもとちがう様子の友達の「なやみサイン」を見逃さないようにしていきたいと思った。
わたしはここで思った。わたし達は子供だから話し合えるけれど、大人になると、腹をわって話せる相手が少なくなり、友達でも「なやみサイン」を見逃してしまい、犯罪が起きてしまうのではないだろうか。
最初言った通り、明るい社会は「犯罪のない社会」なのだろうか。そうならば、どの世代も「腹をわって話せる友達」が必要だと思う。しかし特に大人は、「友達をつくる機会」が子供より少ないかもしれない。
わたしは今後も、友達の「なやみサイン」を見逃さないよう、大人になっても腹をわって話し合える友達が出来るよう、がんばりたいと思う。そしていくつになっても、なやみという肩の荷で心の社会が押しつぶされる前に、肩の荷を軽く、下ろす存在になりたいと思った。
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