因島で見た野鳥【65】トラツグミ

スズメ目ヒタキ科の一種で、全長29.5cm、ヒタキ科ツグミ類では最大。体全体の黄褐色地に、黒色の横斑や三日月状の斑がある虎模様で、雌雄同色である。中国東北部や朝鮮半島で繁殖し、冬には東南アジアなどに渡る。日本では、繁殖している地域もあるが、積雪のあるところでは南に移動する。因島では、数年見ることができたが、いずれも冬であった。単独で、畑や雑草地のミミズなどを取っている。夜から明け方の静寂の中で、「ヒー ヒー」とか「ヒョー ヒョー」と澄んだ声で寂しげに鳴く。暗闇で、いきなり聞こえてくると、不気味であろう。昔は、この声の主は、正体不明の怪獣「ぬえ」(頭が猿、胴体が虎、尾が蛇)と考えられていた。鳥の声と分かり、この鳥を「ぬえ鳥」といった。

万葉集(1997)に、「ひさかたの天漢原(あまのかわら)に ぬえ鳥のうら嘆(な)けをりつ すべなきまでに(天の河の河原で、ぬえ鳥のように、心の中で泣けていた。仕方がないまでに)」と詠まれている(武田祐吉著 万葉集全講)。織姫星・牽牛星が、七夕にしか会えない定めを嘆き悲しんでいるのか?

小型の鳥の渡り追跡は、軽いジオロケータで調べていることを連載(64)で述べたが、大型の鳥には、もう少し大きな機器を装着して精度を高めて追跡できる。一つの方法は、送信機のみを装着し、その電波を人工衛星で受信し、送信機の位置を特定し、地上にその結果を送信する方法である。連載(46)でオオソリハシシギが1万2千㎞を無着陸で飛んだことを紹介したが、この方法によると考えられる。一方、GPS電波を受信する受信機のみを鳥に装着して、その位置データを記録・保存し、受信機を回収して位置データを取り出す方法もある。さらに、受信機と送信機を装着し、GPS位置情報を記録し、衛星を介して位置情報を地上に送る方式もある。これでは、ほぼリアルタイムで渡りの様子を追跡できる。これらの方法で、多くの大型の鳥の渡りルートが調べられている。

タカ目ミサゴ科のハチクマやタカ科のサシバなどについての詳細な結果が、樋口広芳著の“鳥ってすごい”や“鳥たちの旅”にある。秋のタカ類の渡りでは、日の出とともに地面が温められて、山際に発生する上昇気流を利用して、旋回しながら舞い上がり滑空して渡る。大群が舞い上がる所では、上昇する群れが柱状に見えるため、タカ柱と呼ばれている。白滝山でも、小規模ながらサシバのタカ柱が報告されている。ハチクマも因島上空を飛んでいる個体もあると考えられる。筆者も、2回撮影機器を担いで白滝山に登り、2、3羽の「タカ」の上昇・滑空を見たが、種の特定には至らなかった。

(写真・文 松浦興一)

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