草取りの陰気な仕事の小半日終りて立てば足腰痛し
松井 弘元
農作業をする中での草取り作業ほど地味で陰気な仕事はない。陰気、という字句は、どうも好きにはなれないが、草取りという仕事には付いて廻る一語である。
畑仕事は、春夏秋冬いつでも忙しいが、とくに夏どきのミカン木の木下の草取りはまさにこの通りである。じっとしていても汗の吹き出る七月八月は梅雨の後を畑草は伸び放題である。木下から木下へと、伸びきった草を引いたり、刈ったりの匍匐前進(ほふくぜんしん)という、昔の兵隊用語ではないが、這いずり廻るのである。高齢になればなるほどにしんどいに違いない。この歌のように小半日と言えば、二時間か三時間である。やっとのことで一区画か一段の除草を終えて立ち上がり、「やれしんどい」と声を出したであろう。やおら腰を伸ばしながら、拳でとんとんと叩く姿が眼に浮んで来る。加齢と共に足も腰も膝も体中が痛く不快になって来る。特に夏の暑さも加わっているので、ここに言っている「陰気」と言う一語は重い響きをもっている。
近ごろは、この苦痛や労力から逃れるために、除草剤を撒くという手抜き作業をやる人が多くなった。
この薬剤を信じる信じないは、それを使う人である。広告や使用についての宣伝文句には。一にも二にも安全であると記載されてはいるが、あの猛々しく伸びる雑草を枯らすことの出来る薬剤撒布をどう受けとっているかである。
高齢化と農離れが急速に進んでいる現在、草枯らしの撒布もやむを得ないと思うのみである。
腰に手をやりながら、今日はこれくらいで午後は昼寝でもという声が聞えるようだ。
(文・池田友幸)
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