去年(こぞ)逝きし義姉の長着の届けられ筆書きのわが名胸あつく見入る

三島美知子
 このような義姉(あね)の死や縁者にかかわる歌は挽歌(ばんか)といわれ、中国の故事の中にも、柩車を挽いていたものが歌ったという。死者を悼(いた)む哀傷歌である。
 そこに歌われている事柄に強弱があっても、内面にせつせつと響いて来る歌ごころと言えよう。


 義姉が亡くなってから早くも一周忌になるかと思いながら、形見分けの長着の前に座って、生前の容姿を思い浮かべている。
 その送られて来た長着の上に「美知子様へ」という一通の封書が添えられてある。見覚えのある流麗な筆文字である。
 「私にまでこのような配慮を頂いて」と、あの日あの時(戦中戦後)へ思いを馳せながら、手にとって心をたかぶらせて見入っている。誰もみないつかは死ぬるのであるが、自己の死を予測しての家族(うから)の一人一人に当てての気配りの届いた一品である。
 この作品の結句で述べてある「胸あつく見入る」によって、故人とこの歌の作り手との在りし日の親密度の濃さが覗える。
 義姉の亡きいまは形見となった長着は、丈が足首まであって、上に羽織あっての長着でもあった。家の中でも外出も長着であって、昭和の初期ごろまでは男も女も着物を着けており、着付けから、帯の結び方、反物から着物へと和裁の塾や学校もいつかその姿を消しつつある。
 義姉からの大事な形見の長着をこれから何度身につけるであろうか、着物は意外に寒さしのぎになる。特別に外出でもなければ、着物姿で亡き義姉を偲ぶ、「祥月命日」の日もある。
(文・池田友幸)

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