続・井伏鱒二と因島【29】その作品に表現された「因島」

最後に井伏と因島に関する資料の中で紹介したい資料がある。一つは「井伏鱒二作品集第四巻」(昭和28年創元社)に掲載された上林暁氏の解説ともう一つは清水凡平氏の「路傍の詩」の「〈52〉夏時雨」である。

この四月頃だつたか、或る朝寝床で新聞を見てゐると、広島県の因ノ島に市政が施行されたと出てゐた。恐らく、日本で百何十番目かの市であり、人口も三万そこそこの小さな市であらうが、因ノ島が市になつたとは面白かつた。因ノ島は、井伏氏の作品でなじみだつたからである。

それから間もなくして、井伏氏が拙宅に見えた。

「因ノ島が市になりましたなァ。一つの島が市になるなんて、珍しいことでせうなァ。」と私は言つた。

「うん。因ノ島だけでは人口が足りないんだ。だから、対岸の村を一つ合併して、それで市にしたんだ。街らしいところは、一本しかないいんだ。」

井伏氏はさう説明したが、多少照れてゐたやうだった。この「因ノ島」といふ作品では、かねて一度は行つてみたいと思つてゐたこの島へ、疎開中たまたま釣りに招かれて行くことになつてゐる。しかし、井伏氏の自伝ともいふべき「ケイ肋集」では、青年時代には暫くこの島へ静養にも行つてゐる。多分井伏氏としては、知悉し、可愛くてならぬ島にちがいない。造船所などもあつて、賑やかな島であるらしい。「さゞなみ軍記」を初めとして、この「因ノ島」などもさうであるが、瀬戸内海のあのあたりの風景を世に顕はした点において、郷土を愛する井伏氏の筆の力は大きい。

「井伏鱒二作品集第四巻」(昭和28年創元社190頁)

(石田博彦)

[ PR ]因島で家の解体のことなら「吾城」へ

当社には家の解体専門の部署があり、お客様のご希望に合わせた、よりよい施工内容をご相談・ご提案させていただいています。

空き家になった時のそのままの状態で、家具や食器、衣類などの処分から、解体後の用途に応じて砂利敷きや、アスファルト舗装等の工事までを一貫して施工します。

丁寧かつ迅速な施工で、因島はもとより島嶼部や尾道近郊においても、幅広く、ご好評いただいております。

【対応住宅】
木造住宅 / RC鉄骨 / 軽量鉄骨住宅 / アパート / 工場 / マンション

【お問い合わせ】
有限会社 吾城(ごじょう)
広島県尾道市因島重井町5800-42
TEL0845-26-2282