草戸千軒町遺跡 社会的な理由で水没
福山市の草戸稲荷前を流れる芦田川中州から発掘された中世の港町、草戸千軒町遺跡。郷土史家の村上正名氏(故人)らが携わって1961年福山市教委による発掘調査が始まった。それから50年が過ぎた。
芦田川の流れをせき止めながらの発掘で、最初に掘り当てたのは鍛冶屋さん跡だと記憶している。以来、県教委の同遺跡研究所などが引き継ぎ、1994年までに中州6万7千平方メートルを発掘。13世紀半ばから16世紀初頭まで鞆の浦を経由しての物流の陸上中継地だったことが判明した。
当初は江戸期の地誌「備陽六郡志」の記述から「草戸千軒町は洪水で流され、芦田川の流水域は何度も変ってきた」といわれてきた。ところが、同遺跡調査で判ったことは町が水没したのは領主の交代などの社会的な理由という説が強くなった。
いまだに「洪水で消えた町」と説明する教科書がある。これまでの出土資料は100万点をこえる。その一部は国重要文化財に指定され福山市西町の県立歴史博物館に収納。課題も指摘される。
(村上幹郎)
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