ふたりの時代【50】青木昌彦名誉教授への返信

政治裁判の21年【4】
 破防法裁判21年間において様々なことを学んだ。それらはすべてかけがえのないものであったが、とりわけそのなかでも、「国家意志」と「国家の論理」を体感できたことは貴重な経験であった。国家意志の表れの1端は、求釈明における検察官の「白紙撤回」騒動で紹介した。国家は自らの権威を保持するためにはなりふりをかまわない、ということを改めて知った。「国家の論理」については、裁判の中心的なテーマである「せん動罪」についての国家との論争を振り返ってみたい。


 「せん動」について通俗的な解釈を知りたくて「広辞苑」で調べてみた。

―【煽動・扇動】人の気持ちをあおり立てて、ある行動をすすめそそのかすこと。アジテーション。「教唆―」
―・罪【煽動罪】治安維持法の罪の1。国体変革または私有財産制度否認の目的で、その実行を煽動し、またはその目的で騒擾・暴行その他、生命・身体・財産に害を加えることを煽動する犯罪。

 ここでも分かることだが国家は、「人の気持ちをあおり立てること」、「ある行動をすすめそそのかすこと」、アジテーションそれ自身が犯罪であると言っているわけではない。もしそれ自身が犯罪であるとしたら、すべての演説という行為が非合法になる。そもそも演説という行為は誰が行おうが、程度の差はあるとしても、「人をそそのかす」ためのものである。問題は、政治目的をもったせん動であるか、どうかにある。
 犯罪とされた私の演説は、3つの公開の集会で行なったものである。その代表的なものを起訴状から引用する。
 ―被告人青木において、全学連書記長として、「4・28首都制圧、首相官邸占拠は断固かちとらなければならない。われわれはもはや機動隊を粉砕の対象としてとらえなければならない。機動隊を粉砕せずして70年闘争は切り開かれない。国家権力の暴力に対してわれわれが暴力を行使することは正当である。われわれの暴力には制限はない。この闘争で騒乱罪・破防法が適用されても絶対にひるんではならない」旨強調し、
 さらに「われわれのたたかいによって沖縄のゼネストを生み出そうではないか。われわれは佐藤訪米をまたずに粉砕しなければならない。4・28闘争にはわれわれの手で首相官邸に中核の旗を立て官邸を占拠することを宣言する。ともにたたかおう」旨演説し、
もって、政治上の主義を推進し、かつ、政治上の施策に反対し、あるいは推進する目的をもって、凶器を携え多数共同して警察官らに暴行・脅迫を加えてその職務の執行を妨害する罪および騒擾の罪を実行させる目的をもってそれぞれの罪のせん動をなしたものである。
 この発言は、4月17日に東京都の文京公会堂において開催された「70年安保勝利、新入生歓迎4・17政治集会」におけるものである。裁判が始まって知ったのだが、警視庁公安部は私の発言のすべてを録音していた。それを使って検察庁が、起訴状風にアレンジしたのだろう。
 今の時代からすれば特異に見えるかもしれないが、こうした発言内容は、当時の時代にマッチしていた。60年安保闘争に示されたように、日米安保同盟改定という国の基本政策をめぐって国論が分裂した情勢では、国会議事堂や首相官邸が焦点になるのは、理の当然であった。
 とりわけ60年安保闘争における全学連の首相官邸や国会構内突入という行動を中高生時代に見聞きしている当時の大学生の多くは、70年安保改定時には首相官邸や国会に向うのだという志向をあらかじめ潜在意識として持っていたのではなかろうか。まさしく「ふたりの時代」とは、そうした時代であった。

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