続・井伏鱒二と因島【27】その作品に表現された「因島」
(4)まとめ
小説「因ノ島」は昭和23年1月に「文藝春秋」に発表され、その後しばしば加筆が施された。とりわけ、昭和39年に刊行された「旧全集」(筑摩書房)では大幅な加筆が行われた。その際、「戦争中の空襲で」の表現が加わった。さらに昭和61年に刊行された「自選全集」(新潮社)でも大幅な加筆が行われた。別言すれば加筆が頻繁に行われたこの小説「因ノ島」は井伏にとって大切な作品だったということではないか。
また「新全集」刊行以前の「旧全集」「自選全集」の作品の収録については井伏本人の意思によって多くの作品が割愛されているが、いずれも小説「因ノ島」は収録されている。
またこんな話も残されている。井伏の最初の選集全九巻が昭和23年に筑摩書房から刊行されたとき、その編集と解説を担当した太宰治は、巻数がいくら多くなってもかまわない、井伏の作品を全部収録したいと考えたが、井伏は頑固に反対して、巻数はどんなに少なくなってもかまわない、駄作は絶対に排除しなければならないと主張し、選集が刊行されたという。
その際にも小説「因ノ島」は「第八巻山峡風物誌」に収録されている。因島の島民でさえほとんどその存在を知られていない小説「因ノ島」だが、井伏にとっては特別な作品だったのではないか。


写真は井伏鱒二右と太宰治左(昭和15年4月、群馬県四万温泉にて)
(石田博彦)
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