買いものの行きに帰りに目に止まる店先に吊られ揺るる干蛸(ほしだこ)

岡野 幸子
 秋から冬にかけての島の風物詩の一つである。八本の脚を形よく広げ店の軒先にひらひらと揺れている。いつもの通い馴れたほどよい道のりを自転車か単車で行き来していて、ふと目に止まったのである。


 「ああ、もう干蛸の時期か」
 去年は大阪の友人に日頃の無音を詫びて歳暮替りにと三匹送り大変喜んでもらった。
 因島に長く住んでいる者であれば、この歌の中の場所は何処かとすぐに想定できる。土生町箱崎区の市民会館上がり口の信号機のそばの門庄(もんしょう)という鮮魚店の軒先である。店の生簀は海が近く、つねに海水の入れ替えをしており、チヌ、カレイ、タイなどの高級魚が生き生きと泳いでいる。信号機が赤になったとき、店先の干蛸の乾きの臭いが流れて来る。いわゆる漁港独特の臭いである。生簀の魚、干蛸をゆっくりと鑑賞できる。買いたくなればそのまま店に入ればよい。
 蛸の種類は真蛸(まだこ)で主に蛸壷漁で獲れたもので、大きさは普通は六十糎くらいだが、まず干蛸には適した大きさがあるのだろう。蛸は何故か古いカキ殻や海草の付いている壷には入らず新しい壷を好んで入るのでつねに新しいのと交換していると聞く、また産卵期もあって、春夏秋冬の漁の仕方もプロはプロとしてやり方もあるのだろう。
 蛸の食べ方もそれぞれのお好みにもよるが、この様な干蛸にして伝統的な保存食品として水に戻したり火に焙る食べ方もあるが、揚げ物、煮物、酢物、刺身のようにいろいろな料理があって、誰にでも手軽にやれる。また。カニやイカ、魚類のように捨てるところがなく全部食べられるという珍味珍品である。
(文・池田友幸)

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