海賊・自由と仲間と家族と【0】連載にあたって

掲載号 05年02月05日号

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ことばの輝き最優秀賞作品 因島高校三年 村上君佳

 県教育委員会は2日、広島市の広島国際学院大で、平成16年度「ことばの輝き」優秀作品コンクールの表彰式を行った。論文「海賊―自由と仲間と家族と―」を応募し、高校修論・卒論の部で最優秀賞に輝いた因島高校3年村上君佳さんは他の授賞者とともに式場で映像を使いながら作品紹介をした。

 村上さんの作品は、引用文献28冊、参考文献18冊、原稿用紙約96枚の大作である。とりわけ注目されるのは、水軍について、「海賊=悪」というイメージにとらわれないで自由な発想で論じたことである。

従来の海賊像から解放されて

 村上さんは、二つの著作から大きな影響を受けたという。その一つである尼子騒兵衛著「落第忍者乱太郎」が描く「兵庫水軍」像をみて、「海賊=悪」のイメージはすっかり消え去り、かわりに、「この素晴らしい人々について、もっと知りたいという意欲がわいてきた」と語る。

 もう一つの作品は、城山三郎著「秀吉と武吉・目を上げれば海」である。能島村上総大将村上武吉を中心に、他の海賊たちや、毛利、織田、豊臣などの戦国大名の関わり合いを描いたものである。武吉の生き方に非常に感銘を受けた、村上さんは次のように述べている。

 秀吉に従おうとしなかったため、武吉は何度も辛い目に遭ったが、生きることと命を重んじ、人を愛することを辞めなかった。私はこの小説を読んで、表舞台にでなくとも、賢く、優しく必死で生きてきた海賊たちは、本当の日本人の姿を反映する人々だと感じた。

 さらに村上さんは、「海と陸は違う」という視点を重視する。海賊たちの行動には、従来の陸=武士の見地で考えると理解できない点が多い、と指摘する。なぜ彼らは地位よりも自由を望むのか、なぜ辛い目に遭っても切腹を考えないのか、そして、なぜ歴史の表舞台にでることがなかったのか。四方を海に囲まれた島国日本を、陸の武士の見方でなく、海賊・海の民の見方で眺めてみたい。どこまでも彼女の問題意識は斬新である。

卒業後も研究続けたい

 村上君佳さんは土生町生れ。土生小・中から因島高校へ。卒業直前の3年生。日本史に造詣の深い小学校教師の父忠君さんを中心に家族で博物館や美術館にたびたび行くという環境のなかで育った。海賊についても教科書にのっていないことを知りたくなった。

 そのチャンスがやがて訪れた。総合学科高校としての充実をめざす因島高校の3年生にとって、課題研究は必修である。そのテーマにすえた。

 開館翌日の宮窪町村上水軍博物館を訪れた。能島の潮流の速さも体験した。論文完成後、山口県周防大島にある武吉の墓を訪れた。

 一人でも多くの人たちに水軍=海賊の本当の姿を知ってほしい。調べるにつれて、興味がわき、自分の推論の正しさに自信がもてるようになった。

 能島では武吉について発掘がつづいている。因島や来島について、まだ調べられてない。卒業後も研究をつづけ、多くの人に知ってもらいたいと、将来の抱負を語る。

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