「雪やこんこん」曲流しつつ灯油屋が凍てつく夕べの路地をめぐれる

掲載号 05年02月05日号

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池本 滝子

 雪やこんこん霰やこんこん降っても降ってもなかなか積もらぬ…

 という音楽を流しながら灯油を売って廻っている、小型タンク・ローリーのことである。因島や近くの島では見かけない「流しの灯油屋さん」の売り声である。雪やこんこんと子供の頃によく歌ったものだった、遠い追憶の中から呼ばれているような懐かしい曲である。こんこんとは、昔流の読みでは、来む来むとも書く。

 物を商うには、いろいろとあるものだ。この灯油屋さんがやっている売り方も一つの方法である。一口に「流し」とは言っても、竿竹売り、焼き芋売り。バイクの買い取り、ラーメン売り、いずれも不特定・多数をねらっての商いである。この短歌を一読したとき、因島や島嶼部では流行らないのかなと思った。みんな便利で重宝するのではと思った。各家庭に灯油を入れてある容器(ポリ容器)の重量は一八キロぐらいだろうが、お年寄りや女性にはかなり重く、無理をすれば腰を痛めるほどの重さである。自家用車のある方は車で購入してはいるが、車の中に一滴でも漏れると臭いがなかなか取れない。手押し車で運ぶ人もいて若者がひょいとさげて運ぶようにはいかず、なかなかの重労働である。必要なときに必要な量だけあればよく、容器に三個も四個も買い貯めも無用であり安全である。

 冬の暖房にはガス、電気、灯油の三つが主流であるが今のところ灯油(石油ストーブ)がダントツに安い。軽快な「雪やこんこん」の曲を流しながら、因島中の路地から路地へ毎日「流し売り」をしてくれたらね、と思ったりする昨今である。

(池田 友幸)

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