紅葉の盛りを降りつむ粉雪に林の径の夢のごとしも

掲載号 04年09月18日号

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上村 美智子

 大自然のもたらす天変地異は人間の想像をはるかに超えたものがある。この歌は秋から冬への季節の変化に出会い、紅葉を包みこむように粉雪が降るという瀬戸内に住んでいては想像もつかない自然現象である。北国に住む人達にはきわめて普通のことでも、はじめて出遭う者にとっては大きな感動である。

 この情景は青森県の奥入瀬渓谷ではないだろうか、この渓流の両側は全部落葉樹であって長さは十四キロという距離の散策道が続いており、十月の下旬ともなると、急激に寒気が襲い、一面に雪の銀世界になると言われている。作者は折よく、雪と紅葉の織りなす景に出合ったのである。

(執筆者・池田友幸


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