瀬戸田の「奥の細道」にて

一週間ほど前、懐かしい道を歩いた。
法然寺から瀬戸田港までの、細い小道。
商店街から少しだけそれた道。


昔はよくその道で遊んでいたから、
今はほとんど通らないから、
住んでいるのに、「懐かしい」という修飾語を
つける道になってしまった。
思い出すのは幼稚園の頃におばあちゃんに
散歩で瀬戸田港まで連れて行ってもらってた頃。
瀬戸田港では二階で遊んだり、
時々100円を入れて双眼鏡をのぞかせてもらった。
見るのは決まって大三島のタンクに描かれた、赤い鳥。
双眼鏡が壊れてお金を入れなくても
遠くを覗ける様になったときは毎日散歩をせがんだ。
灰色の思い出もあるけれど、先日はそんな幼少の頃の、
この道に置いてきた記憶を思い出しながら歩いた。
人と出会ったら、知らない人でも
挨拶しないと通りすごすことが
できないような気分になる細道。
このあいだは人には出会わなかったけれど、
猫も歩く速さを落として通り過ぎた。
諸行無常、ビルドアンドスクラップのスパンが
短くなりつつある世の中で、ほこりにうずもれつつある
寂しさを残しながらも、幼少の頃の記憶とさほど変わりなく
残っている道があることが嬉しく感じた。
変わることで楽しいこともあるけれど、
変わらないことで楽しいときもありますね。

オマケ

写真はそんな道で出会った、逃げた方の猫です(笑)

筆者紹介

おんぞう
おんぞう
生口島にある瀬戸田町は私にとって「育ちの故郷」です。島を離れて以降、この島はただ帰省をするだけの所だったのですが、いざ戻ってみると、あらためてこの育った島のことについて知ることの多さに気づかされました。

五月の半ばにはみかんの花のかおりが島をつつむこと。
潮の満ち引きで流れが変わること。
天の川を見ることができること。
燧灘のむこうの香川のほうまで一望できる山があるということ。
空がこんなに広かったということ。
自然は季節のうつろいの中で様々なことを教えてくれます。

時には忘れていたあたりまえのことに気づかされてみたりもします。都会のように刺激的なものではありませんが、自然は嬉しいときにも哀しいときにも心にゆるやかに染み入るように語りかけてくれます。 時々、光と風、海と島が作り出す色彩を見ながらぼんやりしたり考えこんでみたり・・・。

今は、「育ちの故郷」であるのにもかかわらず、 懐かしさと初めて経験する新鮮さが入り混じった不思議な気分を楽しみながら過ごしています。違う場所での生活が長かったせいか、客観的にそう思える部分もあるのかもしれませんね。

ここでは私が瀬戸田で過ごす日常から思うことや感じたことを自由気ままに書いていけたらと思っております。

略歴

本名・藤田れお。信州大学卒。三協精機製作所株式会社(現日本電産サンキョー)に生産技術職として新製品の生産準備、合理化改善、ISO14000部門事務局を担当。退社後、国内やヨーロッパを旅して歩き2004年より瀬戸田在住。瀬戸田では、ちょこちょことイベントに参加させてもらってます。

古きを温め、新しきを創る。 Onzo(おんぞう)はこの温故創新(おんこそうしん)を略してみました。

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