太刀魚 究極の天日干し
因島の東海岸、鏡浦に太刀魚のうまい天日干しがある。
太刀魚との再会は鮮烈でした。私が関西出身で祖父が魚屋(屋号は魚虎といいます)を営んでいたこともあって、小さい頃から太刀魚が家の食卓に並んでいました。その後、大阪を離れ小骨が多いことを含めその名前を思い出すことはありませんでした。4年前の秋、因島に暮らすまでは・・・・
取材・写真 大西好樹
今が旬の太刀魚。焼いても刺身でもいけますが、お奨めは天日干し。究極の天日干しに出会ったのは因島の東海岸にある因島鏡浦町。その出会いは友達からのお裾分けでした。脂の乗った太刀魚の天日干しの素朴な味が忘れられず、お目当ての因島鏡浦町に買いにいくのですが、かなり先まで予約が入っており、なかなか手に入らないのが悩ましい。
いつもお世話になっている因島鏡浦町の能浦さんご夫妻を訪ね、そのおいしさの秘密を探りました。
ご主人の能浦晴美さんの太刀魚漁は10月からはじまり2月中旬ごろまで行われます。天気がよい日は午前5時と午後4時半からの2回漁に出ます。能浦晴美さんは、定年まで尾道港と土生港(現尾道市因島土生町)を結ぶ定期航路の船員をされ、その後漁を始め20年のキャリア。
2時間半ほどで収穫した太刀魚は、奥さまの能浦イワコさんが三枚におろし天日干しへ。大きいのは商品として販売し、小さいのは隣近所や買い求めていくお客様にサービスするそうです。
一見するとなんの変哲もない干物。しかし、一味ちがう能浦さんの天日干しは使っている塩とその手間ひまにあります。
能浦さんこだわりの塩(どこの塩かは秘密)と少しのお酒をまな板の太刀魚にていねいにふり、まるで空に泳ぐ鯉のぼりのように天日で十分干します。雨のときは大きな扇風機を使って乾燥させる念の入れようです。
因島の太刀魚漁についてもっと知ろうと因島漁協に伺い、中井参事に話しを聞きました。
太刀魚の生態ははっきりと把握されていないとことわりながら、瀬戸内から太平洋沖まで回遊しながら1年間に3、4回は産卵すると教えてくれました。因島の漁師さんは魚を求めて魚島や鞆の浦沖、春先には松山沖まで漁にでかけるようです。太刀魚は5キロの箱に太刀魚が何本入るかにより価格が決められ、めったにないようですが5キロ箱3本入りの場合、1本(2キロ近い大きさ)の値段は8,000円程度になり、京阪神地区に出荷されます。構造真珠や化粧品の原料にも使われ、小さい規格外は佃煮にする地域もあるそうです。
能浦さん夫妻の太刀魚商売。いや商売というには損得を度外視し、喜んでくださる人がいる限りは続けるライフワークといえます。東海岸の因島鏡浦町に行く機会がある人は、足をとめ頭上を見上げてください。空に気持ち泳ぐ太刀魚が発見できれば、それが能浦さん家の太刀魚だと思って、間違いない。
筆者紹介
-
芸術は爆発だ!の岡本太郎氏制作の「太陽の塔」がある大阪府吹田市生まれ。
関西学院大学卒業後、東京のPR会社で国内、海外の企業や団体やサッカー、テニスなどスポーツイベントのPR活動を担当。
2002年11月から妻の古里である因島に活動の拠点を移し、デジタル画像処理会社や家具メーカーの広報活動を支援し、現在は造船、海運を中核とする企業グループに在籍。
因島の読み聞かせグループに参加し、小学校などで好きな絵本を子どもに語っているおっさんです。
最新の投稿
- しまなみ人インタビュー2009年11月20日「みかん蜂蜜」のお父さん
- しまなみ人インタビュー2009年5月13日しまなみ海道、とびしま海道サイクリングマップの仕掛け人はグルメの達人であった。
- しまなみ人インタビュー2007年2月13日芸術家 瀬島匠さん
- 大西が行く2006年11月19日因島出身の芸術家、瀬島匠の個展から
食べてみたい。ぼそっ。