学生が見た平成の大合併を検証 卒業論文・市町村合併 広島県豊田郡瀬戸田町を事例に【13】

掲載号 06年07月29日号

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(3)今後の展望

 平成18年1月10日、瀬戸田町および因島市は、正式に「尾道市」となった。観光に力を入れている瀬戸田町は、同じく観光都市である尾道市とともに、新たな観光事業を行っていく予定である。瀬戸田町が構想を練っている事業は4つある。

 まず1つ目が、サンセットビーチのリニューアルである。ここはもともと海水浴場のみの場所であるが、それだとシーズンオフ時には観光客が全く来ず、場所を遊ばせている状態になってしまっている。そのため、サンセットビーチのすぐ近くに温泉、または大浴場などを建設し、総合的な健康増進施設を作ることにより、1年中客が来るようにするのだという。また、海水浴場だと若者や家族連れなどしか訪れないが、健康増進施設を作ることによって、高い年齢層の集客も見込めるのではないかと予想している。そうすれば、観光客だけでなく、高齢化が進んでいる瀬戸田町内や近隣の島々からも客を集めることができる。

 2つ目は、高根コミュニティセンターの建設である。現在、高根にはほとんどみかん農家しかなく、島の奥には使われていない土地などもある。そこに、児童が自然と身近に触れ合うことのできるような施設を建設する、というのがこの計画だ。教育機関の行事や、休日などに利用できるような施設である。

 3つ目は、平山郁夫美術館のさらなる充実である。平山郁夫氏は、瀬戸田町が故郷の画家であり、したがって、瀬戸田町の各地に平山氏ゆかりの地や作品のモチーフとなった場所がある。そういった場所も改めて観光名所として作り直し、瀬戸田町全体を平山郁夫美術館とする、という計画である。

 そして4つ目が―これは観光事業ではないが―、支所の充実である。先述のように、瀬戸田町の町役場は、今後、尾道市役所の支所として段階的に削減されていく。しかし、役場の規模が小さくなり人員が削減されると住民サービスは低下するだろう。いかに尾道市の一部とはいえ、瀬戸田町があるのは一番端である。「瀬戸田の事は瀬戸田にしかわからない」と瀬戸田町は支所の規模を小さくしすぎないよう尾道市と話し合っているとのことだ。

 しかし、やはり問題も多くある。まずは、しまなみ海道の料金についてである。しまなみ海道は有料道路、おなじ尾道市内の行き来であっても通行料を払わなければ通ることはできない。生口島から因島までは軽自動車で300円、普通車で350円。向島までは軽自動車で850円、普通自動車で1100円。本州尾道までは軽自動車で1050円、普通車では1300円もかかるのである。つまり、市内に出かけて帰ってくるのでも、最大2600円もかかってしまうということになる。この橋の料金問題については、さまざまな話し合いがなされてきた。しかし、日本道路公団が民営化されたこともあり、全線無料にはなかなかできないというのが現実のようである。

 地方自治体としてできたのは、各家庭が自家用車にETCを設置する際、その本体と設置費用を無料のサービスにすることくらいだった。通行料金は結局住民が支払わなければならないが、支払い時の手間は省けるようになった、という程度の変化である。

(続く)

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