学生が見た平成の大合併を検証 卒業論文・市町村合併 広島県豊田郡瀬戸田町を事例に【6】

掲載号 06年05月20日号

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(III)調査結果と考察

(1)合併までの流れ

 平成12年11月、政府の合併推進策にのっとり、広島県は「広島県市町村合併推進要綱」を公表した。その中で瀬戸田町に示された合併のパターンは3つあった。

1つ目は尾道市・御調町・向島町・因島市・瀬戸田町の2市3町による合併で、
2つ目が三原市・本郷町・久井町・瀬戸田町の1市3町による合併、そして
3つ目が因島市・瀬戸田町の1市1町による合併であった。

 その約1年後の平成13年11月、瀬戸田町では、住民に対して「市町村合併に関する住民意識調査」というアンケートを行い、合併の是非や、合併の組み合わせとしてどれが望ましいか、などを調査した。

 その結果、「市町村合併は必要だと思う」と回答したのが53.8%、合併の組み合わせに関しては

尾道市・御調町・向島町・因島市・瀬戸田町の2市3町による合併が17.2%、
三原市・本郷町・久井町・瀬戸田町の1市3町による合併が41.6%、
因島市・瀬戸田町の1市1町による合併が17.0%という結果であった。

 この結果を受け、当時の瀬戸田町町長であった柴田大三郎氏は、2つ目のパターンである三原広域での合併を目指し、三原広域合併任意協議会への参加を議会に提案した。

 しかし、アンケートの選択肢には、「因島市」が2つ含まれており、尾道広域での合併と、因島市との合併という違いこそあれ、「三原広域ではなく因島市との合併」を選んだ住民も合わせて34.2%いたということになる。

 このように住民の意見が割れているということや、「瀬戸田町は単独町制でやっていける」との意見、また「合併の相手をいま決定してしまうのは時期尚早ではないか。いま合併協議会に参加してしまうと、もう後には引けず、他の選択肢を検討することもできなくなってしまう」という議員の声もあり、平成14年8月12日、瀬戸田町議会は、柴田町長が提案した三原広域合併任意協議会参加のための予算案を1票差で否決した。

 しかし、柴田町長は「三原広域での合併」という自身の意見を変えず、三原広域合併任意協議会に瀬戸田町も参加するべく議員の説得にあたった。

 柴田町長は、三原広域を選択した理由を、5つ挙げている。

1つ目は新市圏の発展性と、その中での観光地としての瀬戸田の優位性、
2つ目は尾道市や因島市といった、観光という同質性を持ち寄るだけでは新時代は開けないということ、
3つ目が町民の日常性は三原市が高いということ、
4つ目は人口規模の拡大による行財政の効率化が必要とされているときに、因島市との合併という小規模合併は問題の先送りとなるだけであるということ、そして
5つ目が瀬戸田―三原間の架橋の完成という、将来に向けての夢の架け橋の現実を目指すべきだということである。

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