マニキュアの指そのままに大根のはざまの草をしばらく取りぬ

掲載号 05年12月17日号

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村井多美子

 ごく日常的な歌で誰でもが体験する内容ではあるがちょっとした心のゆらめきを感じさせてくれる作。

 季節は初秋、十日ばかり前に蒔いておいた大根の双葉の列の中に、早くも雑草が、と思いながら一本一本抜き捨てている。雑草はたくましく放って置くと、主人公の大根を覆ってしまって、草とりの時に一緒に抜けてしまう。

 気がつけば昨日ねんごろにマニキュアをしたばかりである。手袋も持ち合わせてなく、一瞬ためらったが、私の気持ちも乗っているし、大根のためにも今が一番よい、と決断したのである。「しばらく」とは三十分くらいか、マニキュアはまたすれば良い。真っ白に太く長く育った大根を想像しながらのひと時である。

池田友幸

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