一本の石蕗(ツワ)の花にぞ見とれたり歳を重ねて分かることあり
掲載号 05年12月17日号
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大庭美代子
ツワもツワブキとも言われており、瀬戸内の島の北向きの斜面に群生しているのを見かける。春先の若芽は食用になるので珍重されている。一般には庭石の根締めとして、また鑑賞用として植えられてある。十一月ともなると黄な色を花の少ない季節の存在感を示すかのように花茎を掲げている。
人はそれぞれに身体も心も加齢と共に変化するものだ。子育てに忙しかった頃には気にも止めないこと、人間関係的なことも、もちろんだが、春夏秋冬の変化にも年齢と共に、というところである。ご近所の庭か一本のツワブキの花、晩秋の庭に明かりを点すかのように咲いた花一輪、花びら一枚に見入っているのである。ふっと絵ごころのある人かと思った。
(池田友幸)
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