岐路に立つ海上交通 燃料費高騰で減便相次ぐ 生活航路は島の生命線

掲載号 05年10月08日号

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 三原と瀬戸田を結ぶフェリーと高速艇が1日からそれぞれ2往復減便された。しまなみ海道の開通以来つづく利用者減に加えて燃料費の高騰が直撃することになった。一番安かった3年ほど前の倍近くの高騰であるという。


土生商船(株)弓場丞社長

 昨年11月1日には三原―重井フェリーが利用者減と燃料費高騰を理由に大幅減便されたばかり。15往復を8往復に減便、4往復を三原―鷺間とした。

 こうした海上交通の再編の動きに住民は、「今後船便は大丈夫なのか」と不安を募らせている。土生商船(株)の弓場丞社長に因島市を中心とする海上交通の今後について話を聞いた。

海上交通維持 困難な時代へ

 弓場社長は、「少子高齢化と過疎化が進み現行運航形態の維持が困難な時代になっている」と指摘する。

 昭和58年の因島大橋開通とそれ以降のしまなみ海道の整備は、島々の生活を一変させた。雇用、教育、医療、福祉、買物など、船の時代においては島内で基本的に解決されていた。しかし、橋開通とともに激しい島外流出と過疎化がもたらされた。

 船便の時間が生活を律していた時代から、車輌を使えばいつでもどこにでも出かけられる時代へと変化したのである。

 渡橋車輌数を増やすために橋は料金を下げつづけた船は対抗したが、民間ゆえに限界を超えてコスト競争はできない。船会社は次々と淘汰されてきた。

 それに加えて今日、燃料費高騰が船会社を直撃している。橋との競争との兼ね合いで料金改定は容易でないという事情もある。しかし営業努力にも限度があり、さらなる減便と運賃値上げの動きが予想される。結局のところ利用者である住民にしわ寄せされるのである。


生活航路担う因島市の北の玄関口=重井西港


無料化への期待高まる重井西港の有料駐車場

港湾基点に集落の形成

 今年度のうちにしまなみ海道は全通する。しまなみ海道の全通は、いっそうの「橋ゲタ化現象」をもたらすだろう。ところで、海上交通は必要でなくなったのか。しまなみ海道だけで島はやっていけるのか。

 言うまでもなく島と島の主要交通手段は船である。三原航路に見られるように島と本州との関係でも船便は依然として有力な交通手段のひとつである。もともと海上交通は、いつでもどこからでも移動できる利便性を有している。

 瀬戸内海の島々は歴史的に港湾を基点に集落形成がなされてきた。早くから海路は開け、陸路は貧弱なままであった。島内の村と村島と島、島と本州の輸送手段のほとんどは海路であった。人の往来、物資の流通は船便によるものだった。港は活気に満ち、港中心ににぎわいがつくり出されていた。「まるごと因島」(池田友幸著)は、当時の土生町の長崎港を次のように描いている。

 「尾道から四国通いの連絡船の寄港するところで国鉄の駅であった。桟橋の窓口で土生発→東京までの切符が買えた。戦中戦後の頃は、四国への連絡船をはじめ、三原や糸崎や各島々への巡航船が忙しく発着していた。朝は五時頃、夜は十一時頃まで船が航行していた」(要旨)。

 長崎桟橋は、線路のない駅と呼ばれていた。未明から深夜まで、にぎわった「海の駅」だった。

玄関口の整備 自治体の責任

 しまなみ海道が全通しようが、島にとって生活航路である海上交通は生命線であることに変わりない。少子高齢化と過疎化が進行するなかで、船便の必要性が見直されつつある。

 また、土生港の市営駐車場の建替にみられるように海の玄関口の整備を中心市街地活性化の起爆剤にする取り組みが開始された。渋滞に泣かされてきた長崎港の生名・弓削フェリー乗場の整備工事も始まる。

 さらに村上和弘因島市長は、重井西港駐車場の無料化に向けて前向きな発言を行った。

 船の利用者や地元住民の批判を無視して強行された駐車場有料化は、市民の港離れ、船離れを生み出し、重井町の衰退化傾向すら作り出した。駐車スペースが大幅に制限され、船賃に駐車料金が加算された。港がさびれたことは、当然のなりゆきであった。

 因島市の統計によると重井港の乗降者数は激減している。平成6年は44万1848人であったが、有料化が始まった平成7年をもって明確に減少に転じ、平成14年には22万855人と半減した。

 さらにその駐車場の利用も、平成8年1万2727台から平成15年7087台へと約5000台減少している。

 重井西港の衰退化については様々な要因があり、駐車場有料化だけをその原因にするわけにはいかない。しかし、因島市の北の玄関口=重井西港整備の立ち遅れが、港離れと船離れを進行させたことは明白である

 「橋に目を向け海に背を向ける」と批判される発想では島のまちづくりは一歩も前に進まない。約10年間にもわたって不公平な駐車料金が徴収され、利用者=住民だけに決して軽くない負担が押し付けられてきた。こうした理不尽さがこのまま放置されてよいものだろうか。
(A)

重井西港問題で読者が投稿

 本紙1831号と832号に掲載した重井西港問題についての記事に関して、読者から本紙のホームページに投稿が寄せられたので掲載する。

『港湾の駐車場の記事については、貴紙の言われるとおりだと思います。重井西港については駐車場もさることながら県道から別れて桟橋にいくまでの道が非常に狭く、しかも曲がりくねっているので大型車は通行が困難です。因島は島なのに港(アクセスも含めて)の整備が遅れています。これが島が衰退した理由の一つだと思います。愛媛県の大三島、大島、伯方島など港が良く整備されています。それで島の地盤沈下をある程度食い止めているのだと思います。』

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