石切・風切大神の御使者 一願竜王社の縁起ばなし

掲載号 05年06月01日号

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 神仏のお参りについては、人それぞれによって考え方や順序があって面白い。私は、因島・石切宮に参拝すると、鳥居をくぐり銅製の龍の口から流れ出る清水で身を浄め、まず、一願竜王社に額付(ぬかず)く。次に本宮を通り抜けてお稲荷さん。天神さまと本宮の眷属(けんぞく=配下)さんにお参り、お許しを得てご本宮にお祈願するのが順序だと思っている。正しいのか、どうかは定かでない。

 このところの因島石切宮は、漫画やアニメ番組「ヒカルの碁」の影響もあって子供連れやアベックの観光客が急増している。その人たちは、鳥居をくぐると一直線に碁盤の台座に立っている「本因坊秀策碑」をバックに記念撮影。日本中で唯一の碁盤の台座に気がつかない人たちが多い。因島石切宮に拍手を打つ人も稀である。これでは、せっかくのご利益も通り過ぎて行くのでは―と、残念に思われる。なによりも、霊験あらたかな「一願さん」のお蔭をこうむることができない。

 この一願竜王社は、もともと国鉄東海道線の尼崎駅構内の西のはずれにあった。京都・伏見稲荷大社の御分霊をお祭りした神殿で戦中の大空襲の難をのがれ焼け残っていた。戦後の復興で福知山線の分岐点でもある尼崎駅拡張でこの神殿を取り払うことになった。ところが、解体工事請負業者に度重なる災難がふりかかり誰も近づこうとしなくなった。そこで、故桑原先生に依頼があり、祭典中に出現した「大白蛇霊」と精根尽き果てるぎりぎりの問答のすえ、焼却計画を変更。焼けただれた神殿を尼崎石切宮境内に移し修復。今では因島石切宮の神使「一願竜王社」として鎮座されている。

 分かり易くいえば石切宮の門番役。その門番さんに挨拶もしないで境内に入るのは少々、失礼なことである。しかも、故桑原先生から一眼竜王―一願竜王についての不思議なお力は枚挙のいとまがないほどお聞きしている。なにしろ「巳さん」といえばヘビのことであるから薄気味悪い。その実状を先生は追求され宗教の世界に神秘的な思想を投じられた。

 神仏霊魂というものは眼に見えないから理解するのにやっかいだ。この眼に見えない世界からの影響が多いことを否応なしに知らされる。これを素直に「不思議」なことでかたづけられない科学・合理主義社会に無理があるようだ。

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