海賊・自由と仲間と家族と【8】

掲載号 05年04月02日号

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山立のここがスゴイ!

 前に述べたように、海賊の拠点である瀬戸内海は、海流の変化が激しい上に、島が多く、地形が複雑である。そのため、腕のいい水先案内人 山立がいないと、船を走らせることができない。しかも!何と海賊たちは、敵船が簡単に近づけないよう、海のあちこちにワナを仕掛けているのだ!例えば、

  • 乱杭』 海面スレスレに杭を打ち、敵船の侵入を海岸線で防ぐ。
  • 捨て綱の法』 太い綱を海岸近くに張っておき、敵船の舵を混乱させる。
  • 沈船の法』  何艘もの船を散乱するように沈める。
  • 捨て石の法』 潮の満ち引きを計算して、磯に石を置く。
 これはもう、瀬戸内海に詳しく、ワナを仕掛けた場所を熟知している、すばらしい山立がいない限り、危なっかしくて、航海できない!さて、先程からずっと言っている”瀬戸内海の潮流・地形”が、どれくらい複雑かというと……、


(A・B)は満・干で異なる

 ものすごい複雑だ!見えにくいけど。しかも左上に何気なく、(A)大島の東側・(B)今治の西側の海流は、満潮・干潮で異なる、と書いてあるし。この地図は芸予諸島のみだが、このような地形・海流が、東の塩飽諸島を含め、瀬戸内全体に見られるのだ。山立はこんなに複雑な地形を熟知し、なおかつ、ワナがある場所まで頭に叩き込んでいる。その上で舵の方向を告げ、船を安全に走らせるのだ。スゴイ!

船中の四功 手引(てびき)

役割

 帆の手を引く(帆を扱う)。帆の高さや、上げ下げを命令する。

資格

 舵取りにも劣らない力量(才能)をもっていること。風の吹いてくる前に、帆を操作しなければならないので、常に先を見通せる、経験の豊富な者であるべき。

年齢

 心が老成している者であれば、年齢は問わなかった。

手引のここがスゴイ!

帆を扱うのが手引の務め。どんな時に帆を引くのかというと……、

  • 順風(追い風)の時……帆を開く。
  • 風が船に強すぎる時……面舵(船首を右へ)や、取り舵(船尾を左へ)にして帆を引いて、風を散らす。
  • 海から吹き上げる風、山から吹き下ろしてくる風が来る時……左右に帆を引き、帆の中に風を取り入れないようにする。などなど。
 このように、風を読み、帆を操ることでも十分すぎるほどスゴイのだが、この役になるためには、なんと、風の吹く前に判断できなければならないのだ!すでに風が吹いてきてから、帆の手を引いたのでは間に合わぬ、というのである。風の吹く前に判断し、帆を操作する手引。スゴイ!

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