海賊・自由と仲間と家族と【6】

掲載号 05年03月19日号

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船中の四功 船頭


能島(のしま)の渦潮

役割

船中の万事をつかさどる役。船の長。

資格

  • 天気をよく見ることができる。

  • 至る所の港の善悪や、広さ狭さ、浅さ深さ、潮の流れの順逆、磯のあたりや沖合の潮の引き具合などをよくよく知っている。

年齢

 年をとっていても、船頭の道に不向きな者は用いることができない。たとえ若くても、船頭の道に鍛錬していて、経験を積んだ巧みな、心の老成した者が選ばれる。

選出方法

 資格の欄で述べたような知識を持っている者は少ない。よって、次のような方法で船頭を選ぶ。

  1. 水夫の中から機転がきき、勇気のある者を選び出す。

  2. 物の道理をわきまえさせ、家伝によって教えさとす。

  3. あちらこちらの国々へたびたび遣わし、その近辺の浦や港の善し悪し、潮の満ち引き、山風や海風の吹き方まですべてを覚えさせ、家に伝わる秘伝によって学ばせ、天気の見方をよく習わせる。

  4. 船頭にとりたてて用いる。

船頭のここがスゴイ!

 江戸時代に森重都由によってまとめ上げられた『合武三島流船戦要法』には、船頭の選出方法について、このように記されている。水夫の中から選ばれた者を船頭にとりたてる際には、

「人柄の大小もよく考えて使うようにすべきである。大というのは、水夫をよく統率することのできる器量(才能)があり、天気などもよく判断でき、船に乗って航海するのにもすぐれ、勇気のある者を選び出し、日ごろからいばりちらさない程度に権力を与えて、小の水夫たちを使わせるようにする。年はたとえ若くても、心の老成した者を用いるべきである。」

 このことから、船頭には、勇気と豊富な経験が求められていることが分かる。この条件を満たすことは容易ではない。しかしもっと注目したい点は、「日ごろからいばりちらさない」というところである。船頭は、前に述べたとおり、船の長である。しかし、そうであっても、威張ることは禁じられている。むしろ水夫をよく統率し、心が老成した者であるように、と命じられている。威張らず、誇り高ぶらず。すばらしい人柄だ。スゴイ!しかしこれは船頭だけではなく、海で生きる人々すべてにとって大切な特質である。このことについては後ほど詳しく述べる。

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