海賊・自由と仲間と家族と【5】

掲載号 05年03月12日号

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海の民が守るもの

 土地を持たない海賊たちは、何を守るというのだろう。海賊行為、それは海の民が貧しさの中で、どうにかして生きようとした結果である。そう、彼らが守るのは「生きる」こと、「命」である。命を懸けて命を守るのである。朝廷が海賊で海賊を退治しようとしたときも、遣わされた側の海賊も、相手の海賊たちが何としても生きようとしていたことを、痛いほど分かっていた。だからお互いを傷つけることはしなかった。


村上武吉、景親が着用していた陣羽織(村上水軍博物館・宮窪町)

 そして彼らが守るべきもう1つのもの、それは「自由」である。自由な海で生きるためには、自由でなければならない。陸からの支配で縛られては生きられないのだ。自由民である彼らには、主従関係における忠節なんていらない。海で生き、島で暮らすのだから、土地なんていらない。だから「一所懸命」「御恩と奉公」なんて言葉など、彼らの辞書にはない。

 海賊が自由である限り、陸が海賊を支配することはできない。そこで政治が考えついたことは、日本の生命線、重要航路である瀬戸内海を海賊に守らせることだった。そして海賊は「水軍」、「警固衆」となっていく。そうして時は流れ、戦国の世に移る。この動乱の時代こそ、海賊の最盛期である。

 ではこれから、室町・戦国を舞台に、海賊がどのような活躍をしたかを、瀬戸内海でその力が最も強大であった三島村上水軍を中心に見ていこう。

 ※三島(さんとう)村上水軍:瀬戸内海にある島で、能島・来島・因島の三つの島を本拠地にした村上水軍をいう。

三、海賊の組織力

 まず始めに、『落第忍者乱太郎』の兵庫水軍を使わせて頂いて、海賊たちの役割を紹介しよう。

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 なおこれは海賊の役割分担であって、その役割には上下の関係はない。船の中では、船頭が最も重要な位置であるが、その船頭は、水夫の中から選ばれる。生まれや年齢よりも、力量や経験が大切にされるのだ。この他にも、足軽や検使などの役があるが、右図中心に進めていきたい。では、ここに挙げた海賊たちの役割一つ一つを、もっと詳しく見てみよう。

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