寒空を舗道にながなが人の列たどればそのさき宝クジ売る

掲載号 04年11月13日号

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松井 嘉寿子

 「アララこの寒いのに何かしら、ながながと人の列が続いてる」と思いながら舗道伝いに列の先まで辿っていくと、今では年末の恒例となっているジャンボ宝クジ売場が大繁盛しているところであった。

 作者はなるほどこんな事かと思いながらも、不思議な思いにかられた。順序よくまた、仲よく列を作って順番待ちをするのは人間さまだよね。チンパンジーも猿も決してしないことである。順番待ちにもいろいろある。先着順、クジ順、年齢順、学年順、オリンピックの入賞者やメダリストのように能力体力の順、以上は誰が見てもどこから見ても納得し、なんとか赦される順番と言うことが出きるが、ときには恐ろしいような不可解な財力、法という名の権力、組織的な暴力による順番がまかり通ることも無いといえない。

 私ども一般市民の一人一人はまことに微力であって順番とか多数決ということは、民主主義の大原則である。人間社会形成の大昔からは専制君主制の時代が少なからずあったが、順番という言葉はつねに人間の心の底に養われていた。

 今では半世紀になるが、第二次大戦の末期の戦前戦後のころには、日本人全員が衣食住に貧困をきわめていた。一家四人の数日分の配給米を受けるために、早朝から根気よく並んだものだった、時には前の二、三人で品切れを告げられて歯ぎしりしたこともあった。タバコでも衣料でも行儀よく行列を作り順番待ちをした。あれから六十年経った今では、飽食の時代で何もかも満ち足りており、順番、行列とは宝クジ買いかバーゲンの行列、プロ野球の観戦の切符買いくらいだろう。

(筆者・池田友幸)

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