接待をする人も遍路も雨のなか憂さは見せずに笑顔交せり

掲載号 04年06月05日号

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有吉 貞子

 瀬戸内の大方の島に島遍路コースがある。八畳、十畳敷の堂宇から、小さな祠まであって、それぞれの島の事情によって異っている

 この作者は、弓削島の方だから、歌われている場所は弓削島で島遍路の日である。旧暦の三月二十一日に行われるのが普通であるが休日に接待をする所が多いようだ。この日は折り悪しく朝からしとしとと小雨になった。大師さんの心の中は寛大であるから、どんな天候でも愚痴ったり、ぼやいたりはせず、何んでも有難いことじゃ、と言ってくれる。この歌は、接待をする側の人か、される側の人かは言ってはいないけれど「憂さは見せず」の一語で接待をしている人と読みとれた。同じ弓削町の人なのであろう。「アラーご苦労さん」と声が出たのである。

(執筆者・池田友幸

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