吟行会に遊びし友はすでに亡く記念のギボウシ(擬宝珠)十年咲きつぐ

掲載号 04年05月29日号

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林原 澄子

 ギボウシは山あいの岩場に自生していて、水と一日に、一、二時間の陽当りがあれば、何年でも生き伸びられる山野草である。六月の半ばともなると、葉柄を長くのべて筒状の花をつける。庭先の石の根締めや、縁取りなどによく植えられているのを見かける。

 作者は数人の短歌をする友人と語らって吟行会に行ったのである(吟行会とは短歌や俳句を作る目的での小さな旅)。あれからもう十年になるだろうか、中国山地の何という渓谷か忘れたが、友に採ってもらった一株である。一年二年と経つうちに大きな株になって毎年白い花を見せてくれる。すでにその友人もこの世には居ない。この花のように元気な明るい人だったと追憶を引き寄せている。

(執筆者・池田友幸

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