シャリシャリと亡き夫真似ての包丁研ぎ光は増せど切れ味悪し

掲載号 04年05月29日号

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平川 房子

 シャリシャリと、快い音を立てて、亡くなった夫がやっていたように研いではみたが、切れ味の方は研がない前と同じかも知れない。

 私の顔がピッカピカに映るように光ってはいるが、トマトやゴボウなどで試し斬りをしているのか、昔の砥石は自然石の荒砥、仕上砥などを使っていたが、近頃は裏と表が異なっている合成砥石である。包丁を研ぐと言うのは、刃先に角度をつけて研ぐことであるから、指先の当て方、角度のとり方には微妙なコツというものがある。昔から餅屋は餅屋と言われているように、物事にはそれぞれ専門がある。はたしてこの作者は、研ぎ屋か知りあいの大工さんにでも研いで貰っただろうか気がかりである。

(執筆者・池田友幸

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