赤き緒の下駄が箱の片隅に真っ新(さら)のまま半世紀過ぐ

掲載号 04年05月22日号

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亀川 慶子

 半世紀とは五十年である。当時二十歳であればその人はいま七十歳である。それに赤い鼻緒が真新しいということは、保存状態がよかったことであろうが、作者は十七か八の頃に母親に買ってもらった想い出の品物でもあるから大事に大事にして来たのである。

 想い出せば何度履いたことだろう。夏祭の宵宮だったかな、お盆の踊りに行ったのは違う下駄を履いたかな・・・と想い出を引き寄せながら下駄箱の上段に鎮座している赤い下駄をしみじみと眺めている。私達の日常生活ではほとんど履かれなくなった下駄ではあるが、男下駄、女下駄、高下駄、利休下駄、幼児用の可愛いコップリ下駄もあった。

(執筆者・池田友幸

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