髪を梳く朝一度きりの吾に少し宵の桜の妖しさ欲しき

掲載号 04年05月08日号

前の記事: “全国ネットの(株)日本セレモニー 因島地区初の葬祭式場6月オープン 高齢化時代投影ゆらぐ島内関連業者
次の記事: “長雨にチュウリップは花閉ざしおり閉ざされしままに輝きており

白須 淑子

 この作者の見だしなみは朝一度きりと言っているから人並みの方である。

 大風が吹いたり、雨に濡れたり、また特別な作業をしている人は別ではあるが、まあまあ普通の主婦であればこの作者と同じである。特に顔や容姿を全面に出す職業の人でなければ一度きりか、ちょっと柱鏡を覗くくらいではないだろうか。

 ところで、昨夜は夜桜を見に行ったのだろうか「私に少し夜桜のあの妖艶さ美しさを下さいね。」と言っているのである。「夜桜お七」と言うのを人気歌手が歌っているが、あの歌詞の作り手は「林あまり」という歌人である。この歌詞作りも何度か夜桜を見に行き、夜桜の美しさを体験したことだろう。作者は昨夜見た夜の桜が放つ、薄いろに深々と妖艶に輝く桜、何処かに天女か魔性の棲むかと思われる妖しさ、その樹下を離れてもしばし幻影があった。私にその何分の一かを下さいと言う願望の作と言えよう。

(執筆者・池田友幸

E

トラックバック