枯葉浮く海辺の井戸より貰い来し 水は日を経ても床の間にある

掲載号 03年05月03日号

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村上宗子

 海辺に近いところにある古い井戸から、飲み水を小さなペット・ボトル容器に貰って来たのだが、勿体無くて飲めずにいつまでも床の間に飾っているという歌である。

 この古井戸の水は、コーヒーやお茶などに使うと大変おいしいと言われたので、私も一杯ということで汲んで来たのである。誰か友人かお客さんでも来たら、と思ううちに一週間が過ぎたのである。まあ寒い時期だからいいだろう、といつ迄も床の間に飾ったままである。

 季節は春先である。何人かの友人と語らって、三庄町の鼻の地蔵へのお詣りと、村上水軍の遺跡と言われている美ヶ崎の丘より、春の燧灘を展望しようということになった。潮順もよくて、少し肌寒い日であったが、天候もよく鼻地蔵、春の海の風景も充分に満喫できた。その帰途に立ち寄った処が、三庄町の四区にある「水ヶ浜」である。ここの浜辺は私たちのずっと親の親の代から受け継がれ守られて来た島人たちの水飲み場である。子供の頃には陸釣りの帰りどきや海水浴のときにはよく飲んだものだった。昔は大人たちが水の大切さを日ごろから教えてくれたものだった。この「水ヶ浜」の古い井戸は、島の清水の湧き出る穴場であるので何時までも大事にしたい。

 波打ち際から数㍍の位置にあっても塩からくないのが不思議である。最近は日本中の海辺はほとんどセメントで固められているが、このような瀬戸内海のさざ波の打ち寄せる砂浜を残したいものである。また、このように清水のこんこんと湧き出る水の穴場はどこにでもあるものではない。

砂文字・池田友幸

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