せとだ映画鑑賞会の濃密な五時間

今年で20周年を迎えた『せとだ名画鑑賞会』がベルカントホールで行われた。広島県出身の新藤兼人監督の作品3本が上映され、監督の全作品に出演している殿山泰司さんのおとうさんが瀬戸田町の出身とあって、3日には役者殿山泰司を語ると題する新藤監督のトークショーが、4日には映画評論家、白井佳夫氏が新藤兼人監督と女優乙羽信子との仕事などを語るトークショーがあった。

2日間はいけなかったので、2日目に上映された「裸の島」(1960年)「かげろう」(1969年)を観に行った。とくに「裸の島」は全編せりふが一切なく、瀬戸内海の孤島で暮らす貧しい農夫家族の四季を描いており、モスクワ映画祭グランプリを取り、世界63カ国に輸出されただけはある素晴らしい作品。

白井佳夫さんの「裸の島」裏話が面白かった。撮影時点で監督の会社、近代映画社は破産寸前で、撮影予算は550万円しかなかったようだ。当時のメジャー(松竹、大映、東宝)が7,000万円程度で作品1本を製作していた頃のこと。そこで考えたのが、せりふなしの作品で、出演者は乙羽信子さん、殿山泰司さん演ずる夫婦以外は全て瀬戸内に暮らす人。つまり出演料はただ。映画を作ったはいいが、日本では上映できる映画館がなく、さぁーどうしたものかと思っていたら、モスクワ映画祭でグランプリを受賞し、せりふがなかったことも幸いして、海外からのオファーが後を絶たず、監督の会社の苦境を救ったそうです。

私が大好きなフェデリコ・フェリーニ監督は奥さんデアルジュリエッタ・マシーナとのコンビで、道やジンジャーとフレッドなど数多くの作品を作ったが、新藤監督と乙羽信子さんは、この監督とこの女優でしか描けない、お互いにリアリズムを追求する映画人の気迫をも感じる作品を乙羽さんが亡くなるまでたくさんの作品を世に送り出した。

新藤監督は、この瀬戸内を舞台に教育をテーマにした映画を取るため、今回の機会に瀬戸内でのロケハンを開始されたようで、94歳の監督の創作への底知れぬパワーがどのように作品に昇華するか今から楽しみ。

筆者紹介

大西好樹
大西好樹PRプランナー
芸術は爆発だ!の岡本太郎氏制作の「太陽の塔」がある大阪府吹田市生まれ。

関西学院大学卒業後、東京のPR会社で国内、海外の企業や団体やサッカー、テニスなどスポーツイベントのPR活動を担当。

2002年11月から妻の古里である因島に活動の拠点を移し、デジタル画像処理会社や家具メーカーの広報活動を支援し、現在は造船、海運を中核とする企業グループに在籍。

因島の読み聞かせグループに参加し、小学校などで好きな絵本を子どもに語っているおっさんです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA