学生が見た平成の大合併を検証 卒業論文・市町村合併 広島県豊田郡瀬戸田町を事例に【3】

掲載号 06年04月29日号

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 2つ目は、少子高齢化の進展である。急速に進行している少子・高齢化により、労働力人口の減少や経済成長の低下が懸念される一方で、医療・福祉等の社会保障関係経費は増大するものと見込まれている。市町村には、そのような状況下でもサービス水準を確保することが期待されており、市町村が提供するサービスの水準を確保するためには、ある程度の人口の集積が必要なのである。

 3つ目は、広域的な行政需要の増大である。交通・情報通信手段の発達により、日常の生活圏が、住んでいる市町村の区域を越えてますます拡大するのに伴い、市町村の区域を越えた行政需要もますます増大しており、より広い見地からまちづくりを考えることが必要になっている。

 4つ目が、市町村合併の理由として最も多く言われている、構造改革の推進への対処である。国・地方を通じて、極めて厳しい財政状況にある中、国・地方とも、より一層簡素で効率的な行財政運営が求められる。そのためには市町村合併が最も効率的であると考えられるのである。

 そして5つ目が、時代の変化に伴う住民のニーズの変化である。情報化、国際化、福祉等、より高度・多様化する住民ニーズに対して、市町村には、これに対応する高度かつ多様な行政サービスを提供していくことが求められている。そしてそういった行政サービスを提供していくために、新たな市町村経営の単位が求められているのである。

(d)住民発議制度

 住民発議制度とは、有権者がその総数の50分の1以上の者の連署をもって、その市町村の長に対して、合併について、その是非も含めた諸々の事項を協議する場である「合併協議会」の設置を請求することができるという制度である。

 ここまでは最初に述べたが、さらに詳しく説明すると、実は議会はこの合併協議会の設置の請求を拒否することができるのである。議会によってこれが否決されれば、当然合併協議会は立ち上がらない、ということになる。

 しかし、そういった場合のために救済措置が用意されている。

 議会の審議において合併協議会設置協議が否決された場合には、市町村長による請求又はこれがなかった場合における有権者の6分の1以上の署名による請求により、合併協議会設置協議について選挙人の投票に付するよう請求することができるのである。

 つまり、合併協議会の設置が一旦は議会に否決されても、有権者が再度6分の1以上の署名を集めることにより、議会による承認を得ることなく住民投票を行い、その住民投票により有効投票総数の過半数の賛成があったときは、議会の議決があったものとみなされ、合併協議会が設置されるということである。

 もちろん、50分の1の署名を集めた際に議会がそれを承認すれば、すぐに合併協議会が設置されるのだから、この救済措置はかなりハードルの高いものと言えるかもしれない。

 有権者総数の6分の1以上の署名を集めるのでもかなりの困難が予想されるのに、さらに住民投票で過半数の賛成を得るというのは並大抵のことではない。

 だが、住民の意思が、議会という場を超えて反映されるという点においては、この住民発議制度は、住民が合併に対して能動的にかかわることのできる、非常に興味深い制度であるとも言えるだろう。

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