灯台の公園にきてなつかしむ去年の五月はトベラ花おぼえし

掲載号 06年04月01日号

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河合 モト

 去年の五月に大浜埼公園を数人の友人達と訪ねた。その時に憶えた花の名はトベラ(海桐花)であった。花の形は白く筒状をしており、鼻を近づけると、やさしいほのかな匂いであった。一緒に来た友人の中の一人に植物に少し詳しい人がいた。「これがトベラの鼻よ、いい匂いがするん」と言いながら、いまさらながらその芳香に心魅かれたのである。人間のもつ五官の一つである臭覚とはなんと有り難いことかと思いながら鼻孔を通り抜ける香りに浸ったのである。

 因島大橋の橋脚のところの駐車場の端っこに何本か植えてあって、今を盛りと咲き、臭いを放っていた。みんな納得したような顔で木の周辺をそぞろ歩きをしていた。思えば三庄町の鼻の地蔵さんにお参りしたとき海沿いの参道脇にも崖を垂れ下がって花をつけていたのを思い出した。只なんとなく見過ごしていた物でも、一と目でもよいその名と匂い花形を記憶すると忘れないから不思議である。

「この花は葉も幹も強そうだし、潮しぶきがかかってもびくりともしないね」。

「雌(メス)木と雄(オス)木があるよ」

 近くには何本もトベラがあったが、よくよく花を見ないことには見分けが付けにくいほど似ていて、筒型の花の中心に芯状のものが付いているのが結実するんだと説明をしてもらった。

 この歌には、今年は何月に来たとは言ってはいないが9月ごろだと仮説すると青い実をしっかりと結んでいる。これにひんやりとする秋の潮風が吹くと、実がぱっちりと割れ、赤く弾ぜた美しい実を見せてくれる。

(池田 友幸)

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