広島第6選挙区小泉劇場の顛末 中央と地方の「ねじれ」は深刻

掲載号 05年09月24日号

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 自民党広島県連は衆院選広島6区支部長の亀井静香元自民党政調会長を公認候補に推薦したが、党本部は郵政民営化法案造反組の主謀者の一人としてノー。ここから中央と地方の「ねじれ」現象が深刻となってきた。

 亀井氏は、無所属で出馬するか、同志のために新党に参加するか、苦汁の選択を迫られた。地元県議会としては自民公認推薦をした経緯もあり無所属の立場を望んでいた。結果は、数少ない選択肢の中から「国民新党」参加を決めた。

 これを受け県議会の最大会派・自民党議員会の6区選出県議ら8人と7区内(福山)選出の1人が加わり、新党に参加せず亀井氏を支援する意見が大勢を占めた。中には党の造反の処分も甘んじて受けると会派離脱の構えを表明する県議も出た。

 亀井氏から「状況を見てからにして欲しい」といさめられたが、6区内自民党県議メンバーの自民党議員会、刷新会、良政会の3会派計11人は会派横断で会合を開いて「前面に出ないで亀井氏支援。新党旗揚げを受けて離党をしないよう」狗肉の策を申し合わせた。

 こうして「刺客」候補を返り討ちにした亀井氏だが小泉自民党の圧勝で郵政民営化関連法案に反発したグループを統合して政局のキャスティングボートを握る構想は崩れた。数的には当分無理だが、2年後の参院選が控えている。こうした背景などを考えてか、参議院の亀井氏の兄(県連会長)郁夫氏、柏村武昭氏とも郵政法案への対応について賛成に転じた。派内の結束や衆院選での自民圧勝による民意の尊重に理由を掲げた。

親分が不在の自民6区支部

 自民党を離脱した亀井氏尾道市新浜の自民党広島第6選挙区支部(亀井静香支部長)の看板を「国民新党」に掛け替えた。県連会長の亀井郁夫参議員は実兄。衆院選支持母体は自民党員。釈然としない組織のまま無我夢中で「必勝カメイ」を旗印に駒を進めた。

 告示に入ると、無所属のホリエモンの応援に自民党の竹中平蔵郵政改革担当相が駆けつけ、武部勤自民党幹事長も「亀井さんは、先が見えていない」と批判。終盤が迫って、地元三原市出身の自民党参議員溝手顕正氏がホリエモンの駅前集会でマイクを握り応援メッセージ。表立っての支援に気配りしていた亀井。自民系の県議、市議を始め一般後援会を刺激。「自民党を脱会する」という動きが一部で出ている。

 これに対し、亀井氏は自民党公認候補がいなかったので私を応援したって自由であったはず。だが、応援してくださった県議、市議の政治活動を考えると、現時点では自民党にとどまる方がいい。私の都合だけではいかない―と、政治構造の流動化をほのめかす。

 こうした背景もあって、第6選挙区の事務扱いは当分の間、自民党県連(奥原信也幹事長)で行うことになった。いずれにしても小泉首相の任期は、あと1年。政治の世界はなにが起きるか分らない。任期満了に伴う広島県知事選は10月20日告示、11月6日投開票で、あと1ヵ月と迫っている。それまでには自民分裂の修復を急ぐべきだろう。

地元への貢献度

 ワイドショーや週刊誌が大きく取り上げた広島6区。議席を手にしたのは亀井さんだった。危機感をバネに残暑の中、東奔西走。雨中行脚。台風にも立ち向かい鬼気迫るほどだった。支持者との握手で、奎子夫人や娘に手を差し出し「おまえか」と照れる一幕もあったほど無我夢中の強行軍をこなした。

 無所属からの立候補が一転して新党結成。亀井さんに残された数少ない選択肢だった。支持者は動揺したが「地元への貢献度」を理由に、6区自民党県議が処分覚悟で支持を決めた。首長、市町議らの多数も同調した。

 「初心に戻る」と自民党政調会長や運輸、建設大臣を務め、派閥を率いた闘将が新人並みの戦いぶりを見せた。小泉与党自民党議席は3分の2を超えた。自民圧勝の中で、亀井さんは何をするのか。地元をはじめ全国の支持者の目はむけられている。

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